2012年5月22日火曜日

思春期が親に向ける気持ち

今回の海外出張中には自分が思春期になっていた。
やろうと思えばできないことはないけど、ちょっと心配なシチュエーションにいた。普段とは違うのでよくわからなかったりする。自信がない。
そのような状況の中で、割と近くに頼れる先輩格の人がいた。
すると、なぜかその人のことを批判したり揶揄する自分がいることに気づいた。
なぜなんだろう?本当はそんなことしたくはないのに。

本当は尊敬している大切な人なんだ。自分の存在の根拠となっている、、、というほど大げさでもないはずなんだけど、その人が見ていてくれるから自分が存在しているような気になってしまう。
だからこそ関わりたいし、その人が何を考えているか知りたい。
その人のように大きくなりたい。その人が何を考え、何を求めているか知りたい。その人が喜ぶようなことをしたい。
そして、いつかはその人を越えたい。
でも、直接言われるとムカつく。ムカついたように振る舞いたくなる。でも本当はとても大切な人。そばにいると安心する。その人に認めてもらえると安心する。
でも、いつもそばにいるとうざくなる。ちょっと遠ざかりたい。
でも居なくなると心配になる。自分がとてもちっぽけな存在のように思えて、心細くなってしまう。
その人がどこにいるか知っていたい。できればちょっと遠くから見守っていて欲しい。

本当は、自分ひとりでできるはずなんだ。会議に出てしまえば、人前に出てしまえば、自分しかいないからなんとかするしかない。
失敗したらしょんぼりするし、成功したらやった〜!!と思う。どちらにせよ自分の責任だからどうにかやっていくしかない。
でも、その人がそばいてくれちゃうと、その人の子どもになって頼ってしまう。そしてうまくいってもいかなくてもその人のおかげで、自分の力ではない。うまくいかなかったらムカついてその人のせいにしてしまう。

一番良いのは、ちょっと離れた距離からあまり口を出さないで何となく見ていて欲しい。遠くから安心感を与えて欲しい。
もしうまく行かなくてもダメ出しはしないでほしい。もうちょっと待っていて欲しい。そして、もしうまくいったらそのことを認めて、ほめて欲しい。

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これは、自分の力が少し出て来たけど、まだあまり自信が持てない思春期の子どもが愛着対象(親)に向ける気持ちなんだなと思った。

私自身の思春期に親に向けた気持ち。
あるいは、若い頃、仕事上の親分に向けた気持ちだったことを思い出した。

2012年5月12日土曜日

Sense of Security/Insecurity

安全であるという感覚。
安全ではない=不安=危険という感覚。
この指標がとても大切であるように思う。

個人レベル)安全感があれば副交感神経優位になりリラックスできる。気持ちを休めることが出来て活力(エネルギー)を醸成できる。
変化・成長する勇気を得ることが出来る。
ソトの世界)安全な昭和基地があれば、危険かもしれないソトの世界を探索しに行ける。
乳幼児期)安心する愛着対象からエネルギーを得て、自分はこの世の中に存在して良いのだという基本的信頼関係を築く。
思春期)未知の世界も多分大丈夫だろうと、安心感をソトの世界にも広げ、冒険することが出来る。

不安感は交感神経優位、緊張して危険の可能性を常にチェックして、すぐに戦闘状態になれるようにalart状態。常にエネルギーを使っているので消耗する。
変化・成長することは一時的なアンバランス(不安定さ)を伴う。そんな冒険をすることは危険すぎるので変化に抵抗し、現状に固執する。
ソトの世界)危険な昭和基地に縮こまり、ソトの世界に出向くことは危険すぎる。
乳幼児期)得られない愛着対象をいつまでも求め続け、自分の存在を肯定することが出来ない。
思春期)未知の世界は不安・危険に満ちている。冒険できない。

場の安心感・不安感)家庭という場、学校・職場という場、カウンセリングルーム(支援関係)という場が安全であれば、自由に気持ちを解放できる不安だったら語ることが出来ず、違和感・緊張のみが残る

関係性)安全・不安の感覚は次々に連結していく。
世代間)親が不安なら、子も不安親が安心あら、子も安心
夫婦)夫が不安なら、妻も不安夫が安心なら、妻も安心妻が不安なら夫も不安妻が安心なら、夫も安心
場)家庭が安心なら、学校も安心家庭が不安なら、学校も不安家族関係が安心なら、友人関係も安心家族関係が不安なら、友人関係も不安

安心感は心身を休め、活力を得て、関係性を拡張し、成長し、状況に応じて変化(進化)できる。幸福感を得る
不安感は心身を消耗させ、活力を消費し、関係性を妨げる。成長できず、状況の変化についていくことができない。幸福感が薄く、さまざまな「問題」を生じやすい

この世の中は危険と不安に満ちている。
その中で、如何にして意図的に安心感を築けるのだろうか?
他者と関わる人たち(教師、セラピスト、支援者、親、上司、指導者、先輩、、、)は、どうやって他者に安心感をバトンタッチしてゆけるか。
そのためには、まず自分自身に内なる安心感を醸成し、キープできるかが重要なポイントだろう。

2012年5月11日金曜日

あるがままを受け入れてはダメ

「あるがままの子供を受け入れましょう」「見捨てずに愛していきましょう」
カウンセラーは良くこのように言います。
はっきり言って、これは間違っています。

、、、いえ、間違ってはいません。子どもが思春期の前ならば。
しかし、思春期以降にひきこもっている子どもにこれをやってしまうと、かえって長期化してしまいます。

1)「あるがままを受け入れる」「見捨てずに愛する」とはカウンセリングの基本中の基本です。
簡単にはぶれずに困難に立ち向かい、自信を持って他者と交流できる、しっかりとした自分を創るためには、自分自身のことを肯定できることが不可欠です。それがあれば周りから多少は否定されても傷つかず、ぐらつかずに「自分はこれで良いのだ」という肯定感を維持して前に進むことができます。これがないと、まわりのちょっとした出来事によって心配になったり傷ついたり、あるいは人から侵害された(いじめられた)気持ちになり、怒ったり、ひきこもったり、うまくやっていく自信を失ってしまいます。
ぶれない自分、自分のことを肯定できる、自信を持てるようになるためにはどうしたらよいでしょうか。とても大切なテーマです。一言でいえば、良い意味での他者の関わりが必要なんです。自分という存在は、自分ひとりでは成り立たちません。「キミはそれで良いんだよ」と肯定してくれる他者が必要です。それは身近にいて絶対的に信頼できる人、つまり親です。子どもを全面的に受け入れる姿勢が大切です。
条件付きの愛情ではいけません。「あなたが良い子だったら、私の期待に沿う子だったら愛してあげるよ」、「良い子でなければもう愛してあげない、見捨てるよ」というメッセージではだめなんです。本当の承認感を得られず、いつまでも親の承認を求め続け、それが得られたと感じるまでは完全に自分を肯定することができません。実際、このようなメッセージを意図せず送っている親は多くいます。そのような時、カウンセラーは条件付きではない無条件の承認を子どもに与えるように支持します。

2)しかし、思春期は違います。
思春期には、ふたつの自分が共存しています。
幼い自分:まだひとりではダメで何もできない、他の人に依存してやってもらわないとダメで、自分ではなにもできずに失敗してしまう自分。
しっかりした自分:困難に立ち向かい切り抜けていくことができる自分。
のふたつが入り混じっています。
どちらがホントでどちらがウソというわけではありまえん。両方ともホントの自分であるところがわかりにくいところです。ただし、ひきこもりをしているのは前者の自分です。ひきこもりはじめると、それまで健在だったしっかりした自分が後退して幼い自分がどんどん拡大してゆきます(退行)。幼い自分から発するニーズ、たとえば親の責任に転嫁したり、依存してひきこもりたい欲求などをあるがままに受け入れてしまったら、幼い自分がどんどん肥大していって、しっかりした自分が育たなくなります。
大切なことは、幼い自分ばかりでなく、しっかりした自分をしっかり認めてあげることです。
「あれ、きみ、結構大人になっているんだね。」
それを受け取ると、しっかりした自分が成長します。親の言葉は子どもに大きく影響します。
「そうなんだ、オレってけっこうできるんだ!」
と自信を増やしていくことができます。
親は幼い自分ばかりを受け入れてはダメです。
少しずつ芽生えてきたしっかりした自分をしっかりと受け入れてあげることが大切です。

しかし、これは思いのほか難しいものです。
ひきこもったり、退行している思春期の子は、しっかりした自分を引っ込めて隠しています。その芽を見出すことは至難の業です。親のみでは難しいので、カウンセラーが一緒に探します。
また、親自身が持っているしっかりした自分幼い自分の塩梅も関係します。
ふたつの自分(幼さ vs. しっかりさ)という構図は思春期に目立ちますが、実際には人生を通じてみられます。子どもにもしっかりした自分がいますし、年齢的に大人の人にも幼い自分が居ます。
親の幼い自分は、子どもの幼い自分を見つけられますが、子どものしっかりした自分を見過ごしてしまいます。
親のしっかりした自分は、子どもの幼い自分はあまり気にせずに、しっかりした自分を見つけられます。
親が子どものしっかりした自分をなかなか見つけ出せない時、カウンセラーがお手伝いします。しかし、カウンセラーが直接見つけてしまっては何の意味もありません。親自身の目で確認することが大切です。だから、カウンセラーが子どものしっかりした自分を見出しても、そのまま親に教えません。いじわるしているわけじゃありませんよ。回り道のようですが、まず親のしっかりした自分を元気によみがえらせるところから始めます。つまり、カウンセラーはひきこもっている子どもに働きかける前に、親に直接働きかけ、親がうまく子どもに働きかけられるように支援します。
これが、ひきこもりの家族療法の考え方の基本です。