児童・思春期精神科医、家族療法 Child and Adolescent Psychiatrist, Family Therapist 精神科コンサルテーション(不登校・ひきこもり、家族ミーティング、男性外来、夫婦関係) 専門家支援(スーパービジョン、講演・研修、精神科医・臨床心理・教育関係者、子ども家庭福祉) International Psychotherapy; Adolescent, Marriage and Family Therapy.
2017年1月20日金曜日
自信の回復
新しい年を迎え、私の今年の目標は
「自信回復」
にしました。
それは、私自身のことでもあり、クライエントさんを支援する目標でもあります。
まず私自身のことをご紹介します。
昨年、私は自信を失いました。
私は診察の他にも、学会の仕事をしています。
昨年の後半に、今まで長い間、なにげなく普通にこなしてきた仕事を大失敗してしまいました。
その時は、いったい何が起きてしまったのかよく理解できず、相手方の問題だろうと思っていたのですが、落ち着いてよく振り返ってみると、どうも自分に問題があったことが見えてきました。
なぜ、私はあんな失敗をしてしまったのだろう?
後から考えてもよくわかりません。
とても、自信を失ってしまいました。
自分は仕事をこなす能力がなかったのかしら?
なぜ、今まで普通にこなしていたんだろう?まぐれだったのだろうか?
本当は何もわかっていなかったのかもしれない?
自分は学者に値しない人間なのかもしれない。
いや、医者としても、社会人としても、ダメな人間なのかもしれない。。。
そんな疑問が頭の中をくるくる回り始めました。
すると、今まで当然こなしていた仕事ができなくなります。
やろうとしても、立ち止まり、前に進められなくなりました。
今までは、自分に自信があるか否かなどと考えもしませんでした。
自信を失ってみて、今まではそれなりに自信があったのだということに気づきました。
でも、それは上辺だけの自信だったのでしょう。
自信があれば、困難に向き合い、なんとか前に進むことができます。
自信を失うと、単純なことでさえ遂行できなくなります。
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クライエントの方々も、同じような状況にあります。
自信を失い、立ち止まってしまいます。
思春期は、厳しい成長の坂を登っていかねばなりません。
時に若者たちは、人々と交わり、前に進む自信を失い、立ち止まり、ひきこもります。
その親も、子どもに接する自信を失い、何も言えなくなります。
子どもにどう接したらよいのか、何と言ったらよいかわからなくなります。
その結果、腫れ物に触れるように、子どもに接して、家族のコミュニケーションを失ってしまいます。
若者がガス欠になり、前に進めなくなった時は、前に進むためのガソリンを補給しなくてはなりません。
自分自身で鼓舞したり、
まわりの人からプラスのエネルギーを補充します。
親のエネルギーは、特に大切です。
しかし、自信を失った親はそれができなくなります。
今、親が何かを言うと、子どもにとって悪い結果になるのではないか、
下手に口を出すと、子どもを傷つけ、自分の部屋に完全に閉じこもってしまうのではないか、
親と全く口をきかなくなるのではないか、、、
と心配します。
親の自信喪失の根底には、失敗体験が隠されています。
親として、失敗してしまった。
うまく関わる自信がない。
そのようなマイナスの体験を引きずっています。
たとえば、ひきこもり始めたころ、親の心配やイライラを子どもにぶつけてしまいました。
不安やイライラは、マイナスのエネルギーです。
子どもは、プラスのエネルギーがあると前に進めますが、マイナスのエネルギーが注入されると、かえって悪くなってしまいます。
その結果、親が何を言っても効果がないどころか、かえって状況が悪くなり、親は何も言ってもダメだと自信を失い、何もできなくなってしまいます。
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私の話に戻しましょう。
私は、昨年失った自信を、今、回復しようともがいています。
恥を忍んで、その具体的な過程をご紹介します。
第一に、失敗したことを、私のスーパーヴァイザーに相談しました。
カウンセラーは、定期的に先輩格のカウンセラーに会い、難しい仕事やクライエントのことを相談します。これをスーパーヴィジョンと言います。
私のスーパーヴァイザーは私の失敗談を批判せず、丁寧に聞いてくれます。話しているうちに、今まで気づかなかった側面が見えてきました。
第二に、問題を整理しました。
スーパーヴァイザーは黙って聞いているだけではなく、具体的にアドバイスしてくれます。
今までのプランAばかりでなく、こういう手もあるよと、プランBやプランCを提示してくれます。
私も、プランBやCも知ってはいました。でも自分には使えないなと思い込んでいました。改めて他者から指摘されると、思い切って試してみようかという気持ちになります。
第三に、失敗した仕事に、再びに挑戦しました。
プランBは慣れていないので、はじめかなり勇気が必要でした。
とりあえず、やるべきことはやりました。でも本当にこれで良かったのかどうか、まだ結果が出ていないのでわかりません。
第四に、それをまたスーパーヴァイザーに持ち帰り、やり方を検討します。
これはまだやっていません。これからの仕事です。
これで良かったのか、良くなかったのか、自分だけではどうにも判断できません。
というか、「これで良いよ」と自分で認める自信もないので、誰かからそう言ってもらいたいのかもしれません。
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さて、子どもに関わる親は、どうやって自信を取り戻すのでしょうか?
どうやって、腫れ物扱いではなく、自信を持って子どもに関わるようになれるのでしょう?
1)まず、そのことを自分だけの胸の内にしまっておかず、誰かによく話します。
心の中にしまっておいたら、解決の糸口を見出せません。
まず、外に出すことです。
誰かと話している中で、自分でも気がつかなかったことが見えます。
2)なぜ自信を失ったのか整理します。
よく話し合っていると、自信を失った背景が見えてきます。
今回の失敗の背後には、過去の失敗体験が隠れていたりします。
たとえば、子どもが小さかった頃の失敗体験、
夫婦間で意見が違うためにうまく関われない、
親自身の子ども時代の体験、、、などなどです。
そのようなことが見つかると、ああ、だから私はこう考えていたんだと、過去と現在が繋がります。
今までわからなかったことにガッテンがゆき、気持ちが楽になります。
3)具体的な指針・アドバイスを求めます。
今までのプランAとは異なる、プランBやプランCを見出します。
ひとりでふだん接していると、違うやり方がなかなか見つかりません。
プランAがうまくいかないと、まだ不十分だからもっとやらなければと、さらに強度を上げてプランAAをやってしまいます。
そういうときは、思い切って別のやり方が有効です。
そのためにも、ひとりで取り組まず、別の意見を取り入れます。
4)そして、認めてくれる人が必要です。
本当に、これで良かったのでしょうか?
子ども自身もよくわかりません。
親としても、こう関わってしまって、良かったのか、わかりません。
本人だけでは判断できません。まわりから見てどうだったのか、という意見が必要です。
子どもは、親に認められます。
親も、これで良いんだよと認めてくれる誰かが必要です。
親にとって、一番大切なことは、あきらめずに、子どもに関わり続けることです。
そう簡単に成功体験は得られません。
何度も失敗した末に、成功します。
就職活動と同じです。
失敗したら、多少、軌道修正して、また挑戦します。
それを、何度も、成功するまで繰り返します。
しかし、これをやり続けることは、相当なエネルギーが必要です。
ひとりだけで親役割を遂行しようとしても、途中でめげて、やる気を失ってしまいます。
もう、私はなにもできない。。。
もう、勝手にしろ。オレは知らん、、、
そのような時は、親自身を支えてくれる誰かを求めます。
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