人が集うって、素敵だと久しぶりに思いました。
そうなんです。それがすべてだと思うんです。
心の問題ってどのようにして起きるか、大きく3つに分けられます。
- 身体のレベル。特に心の問題の場合は脳の代謝の変化によって起きる。
- 心理のレベル。どう感じて、どう考えるか、気持ちレベルの変化によって起きる。
- 人間関係のレベル。(身近な)人との関わりの変化(ぎくしゃく)によって起きる。
どれも正しいんです。というか、この3つのレベルがお互いに関連した結果として、ひとつの「問題」として結実します。
たとえば、お父さんがリストラにあい、家族関係がぎくしゃくします(人間関係のレベル)⇒イライラ、不安感が強くなる(心理のレベル)⇒よく眠れなくなり、朝も起きれず、やる気が低下して(身体のレベル)⇒学校に行けなくなる、という具合に。
これは、わかりやすく単純化した例ですが、実際はもっと複雑に絡み合っています。
このように、心の問題をどう見立てるかによって、解決の見通しが異なってきます。
- 身体のレベルから攻める場合、身体、特に脳神経系に効くお薬を使います。上記の例でしたら入眠剤や安定剤を投与して、よく眠れるようにして、身体をすっきりさせるというように。
- 心理のレベルから攻めるには、一対一でじっくり話し合います。イライラした気持ち、不安な気持ちなどを表現し、どう考えたらよいのか気持ちを整理します。その結果、新たな見方や希望が生まれてきます。
- 人間関係のレベルから攻めるには、心の問題の背後にある人と人との関係性をチェックし、うまくいくように支援します。上記の例だったら、家族関係をどうにかぎくしゃくしないように調整します。ハローワークではないので、お父さんに仕事を見つけてあげてリストラ問題をどうにかするなんてことはできません。リストラという家族ストレスが加わった状況の中でも、ぎくしゃくする場合と、ぎくしゃくが軽くなる場合があると思います。そのあたりに焦点を当てます。その結果が功を奏せば、子どもも元気になって学校に行けるようになります。
この3つのレベルをうまく使い分けることが大切ですが、どこに焦点を持ってくるか、問題の性質によって異なります。
- 心の問題の背後に、統合失調症や自閉症など、身体の病気が隠されている場合、身体レベルの治療(=お薬)が効きます。
- 自分の心のありように悩み、だれかと話したい、気持ちを整理したいと願っている場合、つまり動機づけが高い場合、カウンセリングによる心理レベルの治療が効きます。
- 人間関係のレベルから攻めるのが有効なのは、人間関係のぎくしゃくが心の問題に大きく影響していると考える場合です。だれがそう考えるか、それは問題を抱えた本人、身近に関わっている人、あるいはそれを客観的に見立てる支援者・周りの人のいずれでも構いません。あるいは、人間関係そのものを修復したい(夫婦関係とか)も、ここに含まれます。
心の問題は身近な人との関係の中で生れ、身近な人との関係の中で癒される。
身近な人との関係の中で生まれているなあと感じる場合、人の力を借りた治療はとても有効になります。身近な人ってだれ?友人や恋人もそうだけど、家族はとても身近ですね。家族の持つ力に焦点を当てるのが家族療法です。
上の命題の「身近な人」を「家族」に限定してみましょう。
心の問題は家族関係の中で生れ、家族関係の中で癒される。
ということになります。
「家族の悪いところを治療する」
という考え方ではありません。家族のせい(家族原因論)、家族が悪いから(家族病理論)ではないんです。もちろん、完璧な家族はありませんから、家族だって悪いところはたくさんありますよ。でも、そんなことどの家族でも同じです。
家族は絶大なパワーを持っています。
そのパワーがマイナスに働くと、人の心の健康に大きなダメージを与えます。
逆に考えて、そのパワーをプラスに働かせることができると、心の問題を解決するための絶大な資源となりえます。
そりゃあ、そうだ。納得できるけど、じゃあ、どうやって?
それが家族療法なんです。
マイナスに働いてしまっている家族パワーを、プラスにひっくり返す術。
そんなことできるの?
そこが職人技なんですよ。
外科手術みたいに、職人のパワーを全開にするわけではありません。
家族の持っているパワーを使います。もともと、家族は大きな力を持っていますから、その方向性をひょいと転換してあげます。その勘所さえつかんで、要所をちょっと押してあげる。もちろん、押す時にパワーは必要ですが、家族の持っているパワーと比べたらたいしたことありません。その結果、家族は自分たちの持つ癒しの力(healing power)を使い、免疫力で傷口を癒すように、自然に問題が消えてゆきます。
人が集うと、傷つきます。
そういうことってたくさんあります。
でも、それと同時に
人が集うと、とても素敵です。
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