2017年7月11日火曜日

親の元気を子どもに伝える(ひきこもり脱出講座より)

「ひきこもり脱出講座」での様子をご紹介します。

・子どもにどう関わったらよいかわからない。
・子どもに何を伝えたらよいかわからない。

そのような親の気持ちを受け、講座では、子どもにどう関わったらよいかをお伝えしています。伝えたいことはあるけど、
・伝えて良いのだろうか?
・伝えると、かえってマイナスになって悪くなってしまうのではないだろうか?
そんな気持ちから、素直に伝えられません。
・子どもに問題が生じてしまった。もしかしたら、親の私がいけなかったのかしら?
・今までの親の関わり方が良くなかったのがひきこもりの原因なのかしら?
今まで、必死に親をやってきただけに、子どもがうまく行かないと、親も自信を失ってしまいます。
すると親の心がフリーズして(凍って)しまいます。
子どもに伝えるべきことを何も伝えられず、まるで腫れ物を触れるように接して、何も言えなくなってしまいます。

しかし、これではいけません。
進むべき道と自信を失った子どもに対して、親は自信とガイドラインを与えます。
そのためには、まず親としての自信をしっかり確保しなくてはなりません。
講座では、そのフリーズを解除して、親の自信を回復する道筋を作っていきます。

-----

脱出講座に参加した皆さんに、子どもに「出さない手紙」を書いてみましょうとお勧めします。何を子どもに伝えたいのかを点検し、イメージトレーニングをします。
「実際には出さないけど、本当に出すつもりで、子どもに親の本当の気持ちを伝えてみて下さい。」

そのようにして書かれてお手紙をご紹介します。

前回、武史(仮名)に手紙を書いたのはいつだったっけ。
「武史を手放すよ。あなたは社会に戻りなさい。戻れる力があるから。」
そういう内容だったと思います。
ああいう手紙は、ママの心が元気でないと書けないし、武史が元気でないと渡せないと思っています。

あれから少し時間が経ちましたが、武史は今なにを考えていますか?
今回は、武史にこんな風になって欲しいなと思っている、ママの気持ちを書きます。
人間はね、三つの資源で育つんだよ。
最初は、家族。
次は、学校と友だち。
その次は、社会生活と他者。
どの資源でも、成功と失敗を繰り返して、その体験が人を育てる。たとえ与えられた資源がイマイチでも、人間はその中で生きていかなければならないと思う。

武史が自分をどう思っているかわからないけど、武史は社会経験が不足しているので、社会によって育てられていないと、ママは思っている。パパやママの話から知識として理解しているかもしれないけれど、武史の実体験ではないもの。
だから、武史には実体験をいっぱいして欲しいの。社会に出ていって欲しい
失敗したら、まだ戻ってくればよいし、そして、また出ていけば良いんだよ。

武史はとても慎重で、何かする前にたくさん調べてから行動する人だと思っています。そこが武史の良いところだと思う。でも慎重すぎて、なかなか動けないのかなと思う時がある。武史が抱えている生きづらさもママは理解しているつもり。音や光に敏感で、人とのコミュニケーションが苦手と思っている。そして静かな生活を望んでるかな。

それでも、家に隠れないで欲しいし、具体的にどうしたら社会に出て行けるか、どういう形が武史にとって望ましいかを考えて欲しい

これがママの今の気持ち。ママは緊張していて、失敗したらどうしようと不安な気持ちで武史に話しかけると、まわりくどくてストレートに話すことが出来ないです。
だから手紙を書いてます。

武史が自分で決めて、自分の道を進んでいくときに、「じゃあ協力して」ということがあれば、たくさん協力するからね。「相談したい」というのであれば相談に乗るよ。対話がとても大事だから。

まわりくどいママからでした。
また、書きますね。

とても素晴らしいお手紙です。
なにが素晴らしいのか、具体的にご説明しましょう。

親の導き(ガイドライン)を示しています。

実体験をして欲しい。社会に出ていって欲しい。
と、決してお説教ではなく、わかりやすく丁寧に伝えています。
「親は子どもに何も期待してはいけない。」
と信じていらっしゃる方が多いのですが、これだけではいけません。
よく、「親は子どもに何も期待せず、あるがままの姿を認め、生きているだけで良いよ
と伝えてあげましょう」と言われます。
これはとても大事です。
そのままの姿を承認するのは守る愛です。
親がしっかりこのような愛情を伝えると、自分は守られているという安全の感覚を抱くことができます。そして安心して他者を信頼して、自分はこの世に存在するに値するんだという根本的な信頼を抱くことが出来ます。
子どもは、とても安定します。

〇放す愛を伝えています。
しかし、守る愛だけでは前に進めません。
「変わらなくてよい。生きているだけで良い。」というメッセージでは、ひきこもりから脱出して前に進むことが出来ません。安心してずっとひきこもっています。
守る愛と同時に、放す愛
つまり「今のままではいけない。変わりなさい。そして君は前に進む力を持っている。」と伝えます。
武史君のお母さんも「社会に戻れる力がある」と、しっかり放す愛を伝えています。
・実体験をして欲しい。
・社会に出て欲しい。
と明確に進むべき方向を示しています。
それは決して高すぎるハードルではありません。
子どもは、親に示されたハードル(期待)を飛び越えることで親の承認を得て、前に進む自信を獲得します。

〇子どもを信頼しています。
具体的にどうしたら社会に出て行けるか、どういう形が武史にとって望ましいかを考えて欲しい
と、その進み方、どのような道を選択するかは本人に任せています。
しかし、前に進まないという選択肢はないことも、はっきり伝えています。

〇親の本音をちゃんと伝えています。
この手紙は、ママの心が元気でないと書けないし、武史が元気でないと渡せない
と、母親の本当の気持ちも隠さずに伝えていますね。
親の本当の気持ちを伝えられれば、子どもは安心します。

このお母さんは、出さないはずだった手紙を、実際に武史くんに渡すことが出来ました。

このようにして、親は子どもに元気(前向きのエネルギー)を伝えることが出来ます。

私は、「ひきこもり脱出講座」で、みなさんと関わりながら、私の元気をみなさんに伝えることが出来ます。

0 件のコメント:

コメントを投稿