2014年10月29日水曜日

姪の結婚式

結婚式に久しぶりに出席した。

若い頃は友だちの結婚式によく出席した。スピーチの順番が回ってくるのは最後の方だから、それまで緊張してお酒も控えなければならない。
そして30歳で自分の結婚式をやって。
その後は教え子の結婚式に時々招かれたが、その数はあまり多くはない。招待される結婚式は、昔風の伝統的な結婚式ばかりだ。今どきの若者たちは、大学の先生や恩師なんてあまり呼ばないでしょ!
大学の先生だと席次とスピーチの順番が前の方になる。早々しゃべって、後はのんびり飲むことができる。
親族席の結婚式は妹と従弟がだいぶ前にあったきりだ。
そして今回が姪の結婚式。
次世代の親族の結婚式は初めての体験だ。

いとこであるうちの子ども達と、祖父母である老親を引率して、新幹線で四国まで一泊の遠征旅行。
私の両親にとっても初めての孫の結婚式だ。
子育て⇒子どもの結婚⇒孫の誕生、成長、そして結婚⇒やがて次世代へ
自分のDNAが繋がっていく喜びを感じているのだろう。
父にとっては60年ほど前に、お嫁をもらいに夜行列車と宇高連絡船で愛媛まで行った旅を彷彿させる。
母にとって愛媛と香川は異なるから、別にノスタルジーの旅ではない。もともと出不精だったのに加えて、80歳を過ぎて耳が遠くなり、家のことが心配だからと滅多に旅行に出かけない。夫婦揃って、しかも息子と孫たちと一緒の家族旅行は稀有だ。孫に荷物を持ってもらい、通勤電車に乗り込めば周りの人がさっと席を譲ってくれる。

花嫁の母親にとって、娘を育て、進学と就職を見守り、彼氏との出会いからプロポーズまで見守り、親から自立する、二十数年間の子育ての卒業試験だ。一年近く前から、就職したばかりの本人たちになり変わり何かと気を遣い、支度を整え、式には留袖を着る。本人たちばかりでなく、親にとってライフサイクルの大きな節目だ。

20歳の長男にとって、結婚式は初めての体験だ。どんなんだろうかなあ。
2年前には「おれ結婚なんかしねえよ」と言っていた彼と結婚式前夜に飲んだ。「おまえは彼女作らないのか?」と尋ねたら、「作ろうとしたけど失敗した。」と言う。少しは進展したな。

16歳の次男に同じことを尋ねても「オンナなんて興味ねえ。男同士でツルんでいたほうがよっぽど面白いよ。」、「結婚式ってご馳走出るんだろ?おれ食うぞ!」のレベルだ。

18歳の長女は従姉の結婚式に一番参列したがっていたが、海外脱出中で果せない。結婚式の写真を送ると、「○○ねえちゃん、すごくキレイ!!」とあこがれる。

姪にはいっぱい言いたいことがあるけど、恩師のスピーチでもあるまいし、伯父がうんちくを垂れる幕ではない。親族に与えられた役割は、本人と家族の成長を遠くから見守り、承認するだけだ。

落ち着いたら、一度おいで。ご馳走してやるから。
でも忙しい二人にそんな時間も取れないよな。花嫁も花婿もキャリアをスタートさせたばかりで大忙しだ。当座は別々の場所で週末婚の生活だ。
でもね。キャリアも大切だけどwork & life balanceも大切だよ。今まで、超スピードで飛ばしてきたけど、これからは、スピードアップとスローダウンの両方が必要なんだ。ハンドルの振動を直に車輪に伝えてはいけない。良い意味での「遊び」を持たせないといけないんだよ。
と言ったところでそんな余裕もないだろうな。

恋愛時代とラブラブ新婚時代には可視化されていた愛情は、二人の生活が落ち着くと逆に見えにくくなるんだよ。ロマンチックなデートみたいな愛から、仕事と家庭に必死で、てんやわんやの愛に変わる。たくさん良いケンカをしなさい。ケンカを避けちゃいけないんだ。ケンカは相手と向きあう真剣勝負なんだよ。"I love you!"のpositive messageばりでなく、"I don't like that!"のnegative messageもちゃんと言葉にして伝えなくてはいけない。以心伝心=言わなくても分かってくれるだろうなんて古い考えではダメだ。ケンカができなくなったら夫婦の溝は修復できないよ。激しく言葉で傷つけあっても、その後に折り合いをつけるだけの親密性が必要なんだ。相手とぶつかる事を避けてはいけない。しっかりツッコミあおう。

、、、というような家族心理学の専門家みたいなうんちくは伯父サンには求められていないんだよ。

でも、良い結婚式だったね。二人の心がこもった手作りの結婚式。30年前とはだいぶ違う。結婚式も時代と共に進化しているんだ。
人生はまだ序盤戦。二人ともたくさんの成功体験を獲得し、しっかり前を向いて進んでいるね。良いことだよ。その貯金があれば、今後、いろいろ現れるだろう苦難の壁も、なんとか乗り越えられるだろう。

披露宴のレストランで、virgin roadが特別に作られた。花嫁と父親が歩き、新郎にバトンタッチする。
私も近い将来この道を歩くのか。
娘は「パパとなんか歩かないからね!」と宣言するけど、歩きたい。
子どもを手離す寂しさよりも、成長の喜びの方が強いんだろうな、きっと。

披露宴のテーブルには、花嫁からのメッセージがあった。

「今日は来てくれてありがとう。彼は是非おじちゃんと話したいみたいです。留学も志しているので、おじちゃんの経験を聞かせてあげて下さい。西麻布・六本木の美味しいお店も教えてほしいな。」

おう、そうか、そうか。それなら是非いろいろ教えてあげよう!

披露宴の最後は新郎新婦のご挨拶だ。
「おじちゃん、すごい勢いで泣いてなかった!?なんかしゃべりにくかったよ、、、、」

いや、済みません。ちょっとワインを飲みすぎちゃって、披露宴の後半のことはあまり覚えていないんですよ、、、

2014年10月8日水曜日

ひきこもり脱出講座の振り返り


前回の「ひきこもり脱出講座」に参加した方々の感想を紹介します。
  • 今までにもひきこもりの家族会などに参加したことがありましたが、今回のように少人数で、先生が中心になって話があり、その後に参加者の現状報告に対してディスカッションするという形式は初めてでした。先生と、参加したみなさんのお話しを通じて共感するところもあり大変参考になりました。
  • 先生のお話と、参加者の方の熱い思いと言葉で、まだ諦めないで子どもに向き合っていこう、子どもを信頼していこうと勇気をいただきました。
  • 自分のありのままの気持ちをそのまま表現して、相手の方のありのままの気持ちをそのまま受け取る。講座の話し合いのそういう対等な言葉のキャッチボールの中で、自然に良いものが生まれる。そういう会話を子どもともできたら良いなあと思いました。
  • 今まで、子どもを傷つけるリスクを恐れて、子どもを「腫れ物」のように関わっていました。これではいけないと思いつつも、どうすることもできなかったのですが、これからは状況をみて、親からのメッセージを伝えていきたいと思います。
  • 親からメッセージを伝えるということは、親として一番しなくてはいけないことなのに、自分は子どもに向き合ってこなかったと思いました。いろいろな気づきがあり、良かったと思います。
2時間の講座を、10名程度の同じメンバーが、3週間おきに6回集まりました。
この講座は一般的な講座とは異なります。講師である私から一方的に知識やアドバイスをお伝えするのではなく、各参加者にたくさん語ってもらい、お互いに話し合う中で解決策を見出していきます。その中で、とってつけたような一般論としての解決策ではなく、各家庭の事情に合った、一番ベストな解決策を見出します。

6回を通じて、みなさん熱心に語り合いました。子どものひきこもりが長引いてくると、ふだん家族どうしで話し合っても先が見えないので、話し合ったり、考えることをやめてしまいます。しかし、講座では、みなさんと共にたくさん話し合いました。ひとりの方が話せば、それに触発されてほかの方も話し出します。お互いの話に耳を傾け、私からも多くのひきこもりの家族に関わってきた経験を語りました。どのように相手(子どもや夫婦)に向き合ったらよいのかを深めていくと、親としての自分自身に向き合えるようになります。

みなさん、親として、子どもに働きかけて、メッセージを伝えたいと願っています。
しかし、振り返って話し合ってみると、ちゃんと子どもに働きかけていません。ちゃんと親からのメッセージを伝えていません。そこには、家族をお互いに遠ざける壁があります。
今回、みなさんと話し合う中で見えてきた壁は次のようなものです。

子どもが傷つくかもしれないという壁
この子は幼いころから繊細で、いじめられたり嫌な思いをしてきた。だから、親が強く言うと、傷つき、もっと悪くなってしまうかもしれないという不安を抱きます。

暴力を振るうかもしれないという壁
以前、子どもに働きかけたら、イライラしたり怒って、物を投げたり、ドアをバタンと強く閉めたり、壁を強く蹴とばして穴をあけたことがありました。また言ったら同じようなことが起きたり、本当の暴力沙汰になるのかと心配します。

うちは特殊だから、、、という壁
うちの子どもは小さいころから弱かったのです。病気を持っていました。発達障害と診断されました。だから普通のお子さんとは違うので、、、先生がおっしゃるような普通の対応はうちでは無理なんですという壁です。

親子に十分な信頼関係が築かれていないという壁
これは、特にお父さんに多いのですが、今まであまり子どもや家族に関わってきませんでした。急に関わったり話しかけても、子どもは戸惑うだけで親のメッセージが素通りしてしまって伝わりません、、、と親は戸惑います。

「親が何か言ったら押し付けになるから、何も言わない」という壁
親から何かを言われるのではなくて、自分で考えて、自分で動き出さなければ意味がないんだ。親の価値観を押し付けてはいけない。子どもが自分から気づいて動き出さねばダメだと考えます。このように考えるのは、母親よりも父親に多くみられます。


会話が続かない壁
親が語りかけても、子どもは何も返事をしません。暖簾に腕押しで、話しかける気力を失ってしまいます。無理にもっと話しかけようとすると、避けて自分の部屋に閉じこもってしまので、それ以上は言えません。今はやっと居間にいることができるようになったので、気に障るような避け、テレビ番組や日常の差しさわりのない話だけ軽く交わしています。

自分は親が嫌いだったという壁
親も昔、自分の親から話しかけられることが嫌でした。だから、親が話しかけるのもきっと嫌がっていると思います。嫌がっているのを無理に話しかけても仕方ありません。

これらの壁はどこにあるのでしょうか?
子どもの心の中にあるだけでなく、親の心の中にあります。
参加者が持っている壁をお互いに紹介する中で、どうやったらその壁を安全に乗り越えられるのか見出すことができました。