2012年1月13日金曜日

親の心配と肯定的な見通し

最近は表情も明るくなり良い状態になりつつありますが、普段はテレビやゲームに浸っています。先日、少し話をしたら、今年は受験はしないと言ってました。田村先生のご指導の通り、強制することなく静観しようと思いますが、このままひきこもりになりかねないと、親としてはやはり心配です。今、親として対応すべきことがあれば教えてください。
 心配ですよね。
それと矛盾していますが、今の段階で親に出来ることは、子どもに心配の反対の安心感を与えることです。娘さんは、これから立ち直りたいけど、立ち直る自信が持てず不安に駆られていると思います。親が与えられるのは肯定的な見通しです。

震災で今まで作り上げてきたものがすべて壊され、何から手を付けて良いか分からず呆然と立ち尽くしてるとき、社会からのバックアップがないと肯定的な見通しを持つことが出来ません。「時間はかかるけどきっと必ず復興できる、地域は自らの力でどうにかするしかないけど、バックで見守っている日本や世界がついていてくれる」という安心感があれば、被災地の人々も肯定的な見通しを持ち、自らの手で地域を復興する気概をもつことが出来ますよね。

でも、付け焼き刃の安心感は、本人もすぐに見破ってしまいますから、親自身、本当に安心感を持てるのかが難しいところです。リップサービスではない安心感を家族の中で醸成することが大切です。よくご両親で相談して、娘さんへの心配な気持ちを共有してみてください。不安感はひとりで秘めていると減りません。言葉に出すと、状況は変わっていなくても心配な気持ちは減ったりします。でも、おふたりの心配の度合いが大きいとかえって悪循環、心配が大きくなってしまいます。そのような時は私がお力になりましょう。

2012年1月12日木曜日

続:親のエンジン・子のエンジン

2011年11月13日のブログ「思春期の親子:親のエンジン・子のエンジン」の続編、
やる気のエンジン(動力源)を親から子どもに付け替える時期が遅くなった例です。


タロウ君は有名大学に入学したものの、単位が取れずに休学中です。
タロウ君の家はとても優秀な家系。ご両親も、お兄さんも立派な学歴をお持ちです。
タロウ君も高校までとても優秀でした。
でも、本当はちょっと違っていたようです。タロウ君いわく、


「大学に入るまで、お母さんがずっとペースを作ってきてくれました。僕のことをとても熱心に関わってくれたのはホントは感謝しなくちゃいけないんだけど、今となってはウザったいとしか思えません。」


「自分はダラダラしがちで、つい勉強もサボっちゃうんだけど、母親が良い塾を見つけ、一緒に行ってくれたり、教材もどこからからすごいのを探してきて、たくさんやらされました。だから、今の大学にも合格できたんです。」



大学生になり、はじめてのひとり暮らし。当初はがんばっていたが、どうも調子がおかしいんです。高校までは先生も自分のことをよく知っていたけど大学は違います。一応担任の先生はいるらしいけど、学生のことはあまり知らず、ほったらかしです。自分で履修する科目も決めなければなりません。授業も高校よりもずっと難しくなりました。でも、まわりはとても優秀な人ばかりです。すっかり自信を失くしてしまいました。勉強しようと思ってもぜんぜん手につかず、眠くなってしまい、集中力が出ません。急にボケちゃったんじゃないかと思うくらいです。毎晩、明け方までネットゲームにはまってしまい、朝起きれなくなりました。

母親はとても心配して、何度か遠方からタロウ君のアパートまでやってきて、いろいろ世話を焼いてくれます。「もう、ウザったいから、ほっておいてほしい。でも、朝起こしてくれるし、食事とか楽だから良いのですけど。」
だけど集中力は回復しません。ぜんぜん単位が取れず、休学して実家に連れ戻しました。家ではパソコン以外は何もやる気がせず、ダラダラした生活です。親が注意しても息子はイライラするばかりで、最近は暴力をふるうようになりました。
心の病気じゃないだろうかと親は心配して、タロウ君がお母さんと一緒にやってきました。

私が診察したところ、どうも心の病気(精神病)ではありません。とても聡明で優秀な青年です。
ただし、やる気(意欲)の動力源はずっと親のエンジンを使ってきたようです。
この年代の子はなかなかカウンセリングに来たがらないのですが、幸いタロウ君は自分でもどうにかしたいと熱心に通ってきました。
タロウ君とご両親に協力してもらい、エンジンの付け替え作業です。
タロウ君はホントは性能の良いエンジン(能力)を持っているのだけど、どう使ったらよいか自信がありません。自信を回復する作業が必要でした。

ご両親にも何度か来てもらいました。子どもたちを愛する、とても良いご両親です。子どものことを思い、親として最善を尽くしてきました。そのために、ずっと親のエンジンを全開にして、子どものエンジンのことを忘れてしまっています。
私にも思春期の子どもがいるので、親の気持ちはよくわかります。たとえ高校生になっても、大学生になっても、親の目に映る子どもは可愛かった小さい頃の姿です。小学校に上がるまでは、親が一生懸命に子どもに手をかけて、愛情をたっぷり与えるのがベストです。それは、中学生くらいで終わりにしなければならないのだけど、その時期を逸してしまったようです。大学に入り、つまづいたタロウ君に、相変わらず一生懸命親のエンジンを差し出していました。
エンジンの付け替え作業には親の協力が必須です。いくら子どものエンジンが動き出しても、親のエンジンも動いていたらうまくいきません。ひとつの車にエンジンがふたつもあったら暴走してしまいます。親のエンジンを停止させること。その作業が必要です。

ただ、エンジンを止めればよいから簡単なことのようですが、実際やってみるとなかなか難しかったりします。

2012年1月8日日曜日

正月ボケ克服法

私は正月4日から仕事を始めていますが、この連休・成人の日を過ぎ、来週から本格始動する方も多いのではないでしょうか。

一年の計は元旦にあり。
お正月は新たな歳を祝い、これからの1年を見通す前向きな時期であると共に、帰省したり、家族が集ったり、普段の生活の縛りから解放され、のんびりできるお休みの時期です。私も飲み過ぎ・食べ過ぎの不摂生がたたり年末年始に5kgも体重が増えてしまいました。

さあ正月休みも明け、普段の生活に戻らなければならないのだけど、なかなか戻れないのが正月ボケです。
どうやって立ち直るか。
私が実践する(と良いなと思っている)方法を身体と心の面に分けてご紹介しましょう。

まず身体面から。

睡眠を十分にとりましょう。寝正月の習慣が良くないと考えがちですが、睡眠を十分に確保し、身体を休めることは大切です。朝の決まった時間に起きられなくなるのは身体ではなく気持ちの問題です。休暇中はせっかくのチャンスですから遠慮せずたっぷり睡眠をとりましょう。ただし、「寝だめ」は通用しません。正月にたくさん睡眠をとったから、その後は睡眠時間が短くても平気ということはありません。毎日、規則正しい睡眠は必要です。
身体を動かそう。怠惰な身体を活性化してリズムを回復するために、身体的な刺激が必要です。一年で最も寒い時期なので、どうしても暖かい家の中にこもりがちです。そこを心機一転、寒いからこそ敢えて外に出ましょう。正月明けの冷たい空気は澄みわたり気持ちのよいものです。近所を散歩したり、買い物や、混雑を外した初詣など、家族や仲間と、あるいはひとりでのんびり外出しましょう。私は天気さえ良ければ、冬でも自転車で約40分かけて通勤しています。厚めの手袋は欠かせず、顔に当たる風は冷たいですが、15分も漕ぎ続ければ体の芯からポカポカしてきます。
体重(食欲)のコントロール。食いしん坊(食い意地が張っているとも言う)の私は、羽目を外すと必ず食べ過ぎ・飲み過ぎてしまいます。私にとって食欲をコントロールするのはかなり難しいことです。お正月には許されると思い昼間から酒を飲んでいた習慣をもとに戻すため、食べる量・飲む量をコントロールします。自己コントロールって、思いのほか難しいもの。私は「試してガッテン式ダイエット」をやってます。といっても、毎日体重を測定しiPhoneのアプリに記録するだけ。年末年始の暴飲暴食中はさすがに体重計に乗れませんでした。正月3日に測定を再開したときはかなりショックでしたが、それから数値が徐々に減っていくのを励みにしています。

次に、心の正月ボケの治し方。

心の有り様をふたつ対比させてみましょう。
  • お正月は休暇モード、つまり家族団らん、まったりなスローペース、テンション下げて、ダラダラ怠惰なのんびり生活。ストレス解放。
  • 普段は仕事モード、つまりテキパキ急いで、効率ペース、テンションを上げて、ストレスを溜めて。
正月明けは休暇モードから仕事モードへ復帰しますが、ちょっと見方を変えてみましょう。心の健康を維持するために、ストレス解放とテンション緩和は欠かせません。休暇モードと仕事モードは対立するものではなく、普段の仕事の中にも休暇モードの良い部分を取り込んでみてはどうでしょうか。
つまり、休暇が明けても低めのテンションを維持します。時間を有効に使うことは大切ですが、焦らず、ゆったりスローペースで仕事をしましょう。健康のための早歩きは効果的ですが、職場の廊下を早歩きしても、電話が繋がらないことにイライラしても、休憩時間を潰して仕事に急いでも、それほど効果は上がりません。建設的な意味での緊張感は維持しますが、不安を呼ぶような緊張感は下げます。忙しさの中に、気持ちの余裕を導入しましょう。

ストレスを下げるためにはモチベーション(動機づけ)が大切です。やりたい仕事は時を忘れ、時間が長くても疲れを感じず良い意味でのやりがいに繋がります。逆にやりたくない仕事、人からやらされている仕事はストレスと感じ、短時間でも疲労感がたまります。
同じことでも、やらされている仕事(外的な欲求)からやりたい仕事(内的な欲求)に転換させてみましょう。そのためにはちょっとした工夫が必要です。
「私はこんな風にやってみたら良いと思うのだが、どうでしょう?」とまわりの人に持ちかけてみましょう。まわりの人が納得して、自分のやり方が認められると、「やりたい」気持ちが高まるものです。お正月は歳も変わり、そのような提案をする良いチャンスです。後ろ向きから、前向きの生活へ方向を転換することが、正月ボケを克服する良い手だてになります。

2012年1月7日土曜日

一年の計=情報発信

明けましておめでとうございます。

元旦にあるはずの一年の計⇒情報発信
ということにします。
若い頃は人や本から学んだり、情報収集inputが中心だとしたら、これからもそれは続けると同時にOUTPUTが大切です。

だれに対して?
Public: より多くの人に対して。大学の授業とか、講演とか、テレビに出たり、本を出版するとか、私の存在をより多くの人に知らしめる。ってのは名誉欲をかき立て、self-esteemが高まりますが、若い頃に比べあまり興味がなくなりました。
Semi-Public: 研究室にいらっしゃるクライエントや支援者たち、あるいはこのブログを読んでくれている人たち。臨床家、精神科医としての私の経験・知識を直接お伝えして、役立ててもらえる人たち。本や論文やテレビでも役立つだろうけど、むしろもっと近くで、直に関わる中で何かを伝えられる喜びの方が好きです。
Private: 家族・親族や友人たち。職業人ではなく、私自身のプライベートな幸せに直接関わる人たちとの交流。これは最も大切なことだけど、ここでいう「情報発信」ではありません。そんなこと、前からやっているし、あえて一年の計にする必要もありません。

何を伝える?
心の健康、家族の幸せ、成長する元気をどう獲得するか。
精神科医として培ってきた知識・経験が、不健康・不幸・元気が出ない人たちに役立つことが、私にとっても何よりの幸せです。友人からの年賀状に「私の会社にも適応障害の人が多く居ます。多くの人を助けられる素晴らしい職業でうらやましい!頑張ってください。」とありました。本当にそう思います。

どうやって伝える?
直接お会いして、会話の中で:面接相談や少人数の研究会。特別な検査や薬を使う訳ではありません。ただ話し合うだけ。たったそれだけで何が出来るんだ?でも、人との交流が原点ですよね。身近な大切な人との交流が幸福を生むと共に、不幸も生みます。私との出会い・交流によって幸せに近づいて欲しい。やってることはごく単純だけど、とても奥が深い世界です。
それは個別にもできるし、十数名くらいまでのグループでやるのも面白いです。私との交流だけでなく、参加者同士の交流が新たな力を生みます。
もう少し人数が多い講演会も良いかもしれない。大学教員時代は、大教室での授業は嫌いでした。でも、興味やニーズを持ってくれる人たちが真剣に聞いてくれる講演会は好きです。

メディアを通して:これが今年の課題なんですよねえ。新しいメディアがたくさん出て来たから。それをどう使いこなすか思案中です。

伝統的な手紙メディア:年賀状もまだ出していないんですよ。プライベート版年賀状は出したんだけど、オフィシャル版は今晩作業します。

新しいインターネット・メディア:
ウェブサイト:職業人としての私の看板みたいなものだから、これが基本でしょうね。ウェブデザイナーの村上さんやイラストレータのよしざきさんとも相談してアップデートしていきます。

ブログ:私自身が気軽にまとまった文章を書ける場所です。それが最近増殖してしまいました。
・このオフィシャルブログ
・支援者向けの研究会ブログ
・プライベートのブログがふたつ(公開版と非公開版)

メールマガジン:つながりのある方々、興味を持ってくださる方々に定期的に発信したいのですが、滞りがち。昨年5月に開業してから8月くらいまでは発信していたのだけど、その後さぼってます。今年はしっかり書きたいと思います。

ツイッター:短い文章のつぶやき発信。しばらく前からやってますが、どんなことをつぶやくいたら良いのか、まだ今ひとつ落ち着いていません。

Facebook:マイブームというか、これをどうやって使うか、今いちばん考えている部分です。先発SNSのmixiは登録したもののあまり参加してません。Facebookの方が使えそう。まだよくわからず試行錯誤してます。

マスメディア:
本:書きたいのですけどね。なかなかそこまで持っていく元気(能力)がありません。まずはブログなんかで書き散らして、それをまとめるのか、新たに書き下ろすのか。でも近い将来、出版よりも電子メディアの方へシフトしていくのでは。研究者としては本を出版してなんぼという世界ですが、わざわざ本を買って読んでくれる人なんて限られているでしょ。むしろだれでもアクセスできる電子メディアの方が優先される時代が来るのでは。

研究論文はもういいかなと思う反面、海外への情報発信としては使いたいかな。まだ国際学会には行きたいし。

テレビなんかはもういいです。そういう公の舞台はみんなからちやほやされて消耗するだけで、自分のやりがいにはあまり結びつかない気がします。

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一年の計は、特に発信したい情報をためずに、思いついたら片っ端から発信していくことです。本を執筆するみたいに格好を付けて丁寧にやろうとしたら私の場合ダメみたい。いつまでも修正が入り、なかなか出せません。むしろ、未完成状態でもいいから、どんどん出すこと。それが私の課題です。
というわけで、出しちゃいます。