2013年10月19日土曜日

親の力を賦活する

ひきこもりの解決に向けて、親ができることはたくさんあります。
家族の力で解決することができます。
しかし、それは決して簡単ではありません。

子どもに言いたい、言わねばならないことは理解しているんです。
でも言えません。

多くの方は「魔法の言葉」を教えてくださいと相談にやってきます。
簡単に解決する方法が見つかるかもしれないと期待します。
「魔法の言葉」はありますよ。
でも、それはソトからやってくるものではありません。処方箋にサラサラと書いてお渡しできるものでもありません。
それは自分自身の中に隠されている「魔法の言葉」を発掘する作業です。とても厄介なこと、骨の折れることです。
カウンセラーは発掘する方法をお教えしますが、掘るのはあなた自身です。とても大変ですよ!!
自分で火の粉をかぶる覚悟をしないといけません。

人を変えることは出来ない。
出来るのは自分自身が変わることだ。

と、よく言われますね。
自分がやらないといけないと覚悟することです。
人をどう動かそうかということではなく、自分がどう動くかということです。
もっと正確に言えば、人を動かすために、自分がどう動くかということなんです。

それは、自分の枠組みを変更することです。
親としての枠組みを変更すること。
人は誰でも「自分のやり方・信念」という枠組みを持っています。
枠組みとは、自分にとって何がOKで、何がNG(イヤ)なのかという境い目のことです。
誰でもイヤなことはしたくありません。
「それで良いよ」というOKの部分で自分の領地を固め、その周りに高い砦を築きます。
砦の外へは行きません。そこは何が起きるかわからない不安と、傷つくかもしれない危険で満ちています。
ふつう、砦のソトには行きません。
でも、今までの自分が変わるために、どうしても領地を広げなくてはならない機会に遭遇します。砦の外に一旦出てみて、NGの部分も自分の領地に含めていかねばなりません。そうすれば新たな自分を獲得できます。
自分から自ら進出できる部分はそれで良いんです。苦労しなくとも自然に自分の領地に含めることが出来ますから。問題は自分がNGと認識した部分です。アタマではそこも領地に取り込んでいかねばならないということは理解できても、自分ひとりの力で危険なソトの部分へ足を踏み入れることは出来ません。

では、どうすればよいのでしょうか?
しっかり信頼できる他者の力が必要です。
その人を信頼できるし、その人は自分を信頼して肯定的に見てくれているなと実感できる人です。
その人に、自分一人では恐くて踏み出せないソトへ連れて行ってもらいます。
「大丈夫。私が保証するからやってごらん!!」
という強いメッセージが必要です。
だれがそれを言うのでしょう?
信頼して肯定してくれる人って誰でしょう?
一応、カウンセラーはその役を担うプロです。
求めに応じて、対価を頂いて、その役をお引き受けします。
ただし、実際にお目にかかってじっくり話し合うことが出来ればの話です。
ひきこもっているご本人とお会いできれば、カウンセラーはご本人と対峙します。
ご本人と会えず、親が「子どもをどうにかしてください」と相談にやってくれば、カウンセラーは親と対峙します。

ふつう、子どもがイヤがることをしてはいけません。そんなことしたら相手から拒絶されます。
でも、生きていくためにイヤな部分に進出する必要があると判断したら、イヤがっても、イヤな部分に連れて行きます。
「大丈夫。私が保証するからやってごらん!!」

子どもがカウンセラーを拒絶しているということは、子どもにとってカウンセラーはソトの世界のイヤな部分にいます。
子どもが交流できるのが親だけなら、親がその役目を果たします。
子どもは自分を守る砦を築いています。
ソトに出たくない。
人と関わりたくない。関わったら自分が傷つくから。
とイヤがる子どもをソトに連れ出します。
「大丈夫。私が保証するからやってごらん!!」

親の私がそんなことを言うのですか?
それはできません。そんなことを親が言ったら、子どもは親を拒絶します。

カウンセラーは、親として作り上げた砦のソトに連れ出します。
いえ、無理強いはしません。そんなことしたら傷つくだけです。
カウンセラーが「とても信頼できるし、自分のことを信頼して肯定的に見てくれているな」と思える人になるまで待ちます。
もしラッキーにも、クライエントにとってカウンセラーが十分に信頼に足りる人になり得たら、無理強いをします。
「傷ついても大丈夫。私が保証するからやってごらん!!」

そうやって、親自身が砦のソトに一歩踏み出して、今まで出来なかったことが出来るようになったら、親が今まで子どもに伝えられなかったことを、伝えられるようになります。
そうすれば、子どもも今まで出来なかったソトの世界に一歩踏み出し、安全の砦の境界線を広げることができるようになります。

手が込んで面倒なのですが、本人とお会いできない場合には、このようにして親の力を介してひきこもりの解決に向かっていきます。

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