2011年4月15日金曜日

被災地レポート3

心の問題の種類。1) 震災前からあった問題。継続したケアが途切れる場合と、震災支援により新たに発掘される場合。2) 震災により新たに生じる問題としてPTSD、悲嘆反応、環境の変化によるものなどがある。

PTSDの例。避難所巡回診療に花粉症の薬をもらいに来たついでに聞きたいんだけど。軽い不眠。イライラして子どもに当たってしまう。夜勤に行く日の午後になると気持ちがドカドカする。震災の晩、多くの人が職場に押し寄せ、暗闇の中、阿鼻叫喚、パニックになった情景が思い出されすくんでしまう。(フラッシュバック)

悲嘆反応の例。巡回中飛び出して来た家族により発見。やっと授かった妊娠。夫と職場の人多数を失う。直後は元気だったが、火葬を済ませ遺品を整理してるうちに無口になり食事せず自室にカギをかけ閉じこもる。親が心配してカギをを壊して入ると、泣きじゃくり、あの人の所に行きたい(自殺念慮)。一日泣いてばかり。家族の心配、疲弊。

生活環境の変化の例。嫁姑不仲で親子世帯分離。家が被災して再同居。嫁姑関係が再燃、姑に罵倒されうつ状態に。

どのようにケアするか。
震災のショックな記憶、喪失の悲しみの想起は辛い。取り乱してしまう(自我崩壊の)不安から隠そうとする、我慢する(東北の地域性)→心の中に押し込まれたまま長期化する。それに対し、何度も繰り返し、安全に表出する。時間の経過と共に消化してゆく。被災者の物語を丁寧に聴く。まず十分な信頼関係を。話を遮らず、その人の立場になり共感する。励ましは禁物。アドバイスは不要。何かをしてやろうとがんばらなくてよい。こじれたPTSD、悲嘆反応(精神・身体症状、問題行動などが生じている場合)は専門家へ。
個別に聴く方が安全感・信頼関係を築きやすい。
家族・集団で聴くと、共通の被災体験を持つのでお互いに分かりあえる。家族・コミュニティの再建に繋がる。しかし、場のコントロール(批判、トラブルを回避)が必要。
喪の仕事(mourning work)安全な環境で喪失の悲しみを十分に表現する。泣いて良い。信頼できる他者に受け止められる。何度も繰り返し、消化してゆく。

支援者自身の心のケア。
支援者ハイ;高い使命感(軽そう状態)。がんばり過ぎても疲れを感じず夜遅くまでミーティング。不眠。やがて突如動けなくなる、身体の不調、イライラ、怒り、批判的、対人関係トラブル。
二次性PTSD:被災者の悲惨な状況の目撃・受け止めがトラウマとなる。支援者自身が被災者の場合要注意。一次受傷と二次受傷が混同し増幅されたり、被災者に投影される。
支援者のセルフコントロール:十分な休息・睡眠。気分転換(レジャー、節度あるハメ外し)、不摂生を避ける。
セルフケア・ミーティング「今日の活動のマルとバツ」10人程度までのグループでひとりずつ紹介。マル=うまくいったこと、良かったこと、感動したこと、自分の強み。バツ=うまくいかなかったこと、失敗したこと、心配なこと、後悔していること、自分の弱み。まず司会者がモデリング。お約束ごとは、口外しない、お互いを批判しない。
個別のフォロー:懸念される支援者に、先輩格がゆっくり話を聴く。十分受け止め、それで良いんだよ、大丈夫だよと肯定・安心を。

支援者の立ち位置。近すぎる場合:熱心さのあまり感情移入(自分の気持ちを相手に投影する)。自分と相手が混同する。遠すぎる場合:信頼関係が樹立しない(どんな心の介入も無効化される)ほど良い距離:近すぎず、遠すぎず。熱く共感する部分と、冷静に自分を客観視する部分を共存させ使い分ける。

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