2014年2月17日月曜日

腫れ物に触るような対応

Q 子どもは学校が合わずに退学して以来、家にいます。アルバイトも何度か面接に行ったのですが採用に至らず、働いたことがありません。何度も家族会議を開き、働くように勧めたのですが、「いま自分で探している」などと言い訳をして、結局、家から出ようとしません。親も腫れ物に触るようなところがあって、なかなか突っ込んだ話ができません。

 このままでは外に出る機会がどんどん少なくなり、本人の将来が心配です。本人が外に出て、簡単な作業でもかまわないので働くことを始め、友人たちとの付き合いも再開できるよう、親はどのように勧めていけばよいでしょうか。

 いままで、私と妻は真剣に考えてきたつもりですが、こういった相談機関を訪ねたこともなく、真剣さが足りなかったと思います。親としてどういった態度と行動をとればよいでしょうか。兄は「親がしっかりしていないとダメじゃないか」と自分の意見を言ってくれます。

A もっと積極的に話しかけ、仕事に就くよう勧めてください。
 何度も家族会議を開くほどお子さんに働きかけ、努力されているのに突っ込んだ話ができていないと感じ、お兄さんからみると、「親がしっかりしていない」と見られているのですね。ということは、親がもっと深く介入できる余地が残されているということです。

突っ込んだ話は難しいものです。親は子どもに向き合う勇気が必要です。突っ込み過ぎたら、傷ついてしまうかもしれない、壊れてしまうのではないかと心配します。どれくらいまで突っ込んで大丈夫なんだろうか、どれくらいでやめておいた方が良いのだろうか、判断に迷います。

腫れ物に触るようにという表現は、機嫌を損ねやすい人に恐る恐る接する時に使います。そのような接し方では子どもは自立できません。親がしっかりするということは、伝えるべきことをしっかり子どもに伝える勇気を親が持つことです。子どもは傷つくことで万能的自我から決別し、家から出る自信を獲得できます。親から突っ込まれて傷つき、それを修復する体験を得ることができれば、ソトの世界で他人から傷つけられても何とか修復できるという自信を得るので、ソトに出ることを恐れなくなります。このようにして、親の力で子どもをソトに導くことができます。

親がそれを実行するためには、親が子どもに対する肯定的なイメージを保持していることが必要です。子どもは傷ついても崩れることなく乗り越えるだろうと予想するので、何も恐れることなく子どもに伝えるべきことを伝えます。その逆に、子どもに対する否定的なイメージを持っていると、この子は少し強く言うと傷ついて機嫌を損ね、崩れてしまうだろうと予想します。親は腫れ物に触るようにしか子どもに接することができません。子どもは傷つきを乗り越えるチャンスが得られないので、ソトに出る自信も得られません。

本人はともかく、まずは親が相談機関を訪ねてみてはいかがでしょうか。どのように接したらよいか自分自身ではわからなくなった時、専門家に今まで行ってきた親の接し方や態度を説明して、親としてやってきたことを振り返ることができるので、いままでは見えなかった新たな方策がきっと見つかります。ただ、相談に出向くというということもリスクを伴います。相談しても相手がよく理解してくれなかったり、期待外れだったり、話すことで傷ついたりするかもしれません。

でも、そのリスクを覚悟で行動してみることが大切です。傷つくリスクを避けるのではなく、リスクに向き合います。親がそのお手本を子どもに示すことができれば、子どももソトに出るリスクを回避せずに向き合えるようになります。

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