2014年2月4日火曜日

両親の仲が悪くても自信を失うことはない

Q 娘は、長い間ひきこもり、「親の育て方が悪い、私の一生は親にめちゃくちゃにされた」とあたります。夫婦の折り合いが悪く、別居中なので、子どもの言うこともわかります。かわいそうに思います。謝ったほうがよいのでしょうか、それとも取り合わないほうがよいのでしょうか。

A 親として、至らなかったところがあれば、子どもに対して率直に謝りましょう。
両親の仲が悪いと、子どもに大きな影響を与えます。たぶん、娘さんもたくさん傷つき、いくつかの観点からひきこもっている要因と考えることもできます。

第一に、仲が悪い様子が子どもに心理的な外傷を与えます。両親が言葉や腕力の暴力でお互いを傷つけたり、無視して口を聞かなかったり、家出したりというようなシーンが繰り返されると、子どもの外傷体験となって残ります。一つの出来事はそれほど大きくなくても、繰り返されることにより恐怖感が積み重ねられ、結果的には大きな不安や恐怖をずっと抱えることになります。

第二に、親密なはずの家族という人間関係が安全ではなく、お互いに傷つけあうという見本を子どもに示してしまいます。思春期は、自らの力で家庭外に親密な関係を築き始める時期です。親が傷つけあっている姿がモデルになると、相手を信頼して親密な関係を築こうとしてもうまくいかないのではないかと、不安になります。

第三に、子どもと近い親が、子どもを自分の味方に取り込んでしまい、夫婦のバトルに巻き込まれてしまいます。多くは、母親が夫に抱く嫌悪感を意識的あるいは無意識的に子どもに投影してしまいます。子どもは親に好かれようとするために、母親に同調して父親を敵対するようになります。親しいはずの人を憎しみ遠ざけることを親から学び、自分の友達に対しても同様な気持ちを抱くようになります。

 このような気持ちから、子どもは親に対して、怒りの気持ちを抱きます。それを表現したら爆発しますし、表現できないと攻撃性が内に秘められて、語ることができない怒りのエネルギーが子どもを生きづらくします。子どもが成長する上で、大きなハンデを負うことになります。
そのことは、親自身が素直に認め、子どもに対してすまなかったと謝りましょう。子どもに対して、親自身の過ちを認めることはつらいことです。親の威厳が損なわれて、子どもに低く見られるのではないかと思うかもしれません。でもそれは違います。むしろ、親が自分のことを認めず、きちんと謝ることができないと、子どもはそれを見抜いて馬鹿にします。

親が素直に現実を認める勇気を子どもに見せると、子どもも現実を直視する勇気を持つことができます。親が自分の人生と家族関係に責任を持つことができると、子どもも自分のことに責任を持つことができます。どんなに育ちにくい逆境があったとしても、そのせいで私の人生がダメになったという考え方は、責任転嫁です。自分で責任を負うとしていません。確かに、大きなハンデは負っています。しかし、夫婦仲が悪いという逆境でも、ひきこもらずに元気にしている子どももたくさんいます。

親の態度として大切なことは、下を向かずに前をしっかり向くことです。夫婦仲が良くなかったのはとても残念なことですが、3組に1組は離婚する時代です。夫婦仲が悪いのは、まれで特殊なことではありません。よく起こりうることです。本来は仲が良いべきですが、うまくいかなかったことは素直に認めて、子どもにもそれを示します。
その上で、前を向いて、自信を持って進みます。自信を失い、気弱になる必要はありません。子どもが失敗したことを、親に責任転嫁しようとする態度を親が認めてはいけません。子どもの苦しみは理解してあげましょう。親自身の苦しみも自分自身で受け止めます。親も子どもも、自分で自分のやったことに責任を取る習慣を身に着けます。

親自身の失敗を悔いて自信を失うのではなく、限界や欠点を認めたうえで前向きに生きようとする態度を親が示せば、子どもも同じように振る舞うことができます。人との関係性に失敗して傷ついても、ひきこもって関係性から撤退することなく、難しい対人関係に前向きに向かうことができます。

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