世界的規模の緊急事態はホントに大変なことですが、長期化している中で、なんとなく人間社会も適応しつつあるように思います。
こんな動画も見つけました。
いずれもZoomを使ったStay Homeからのパフォーマンス。
素晴らしいですよね!
特に(1)のcreativityには感動します。
この手法はVirtual Choirとして、以前からEric Whitacreなどによって演じられてきましたが、ここに来て一気に広がりました。
昔はこんなのもありましたけど。
https://youtu.be/9AjkUyX0rVw
ーーーー
私は、年齢的にも、いろいろな学会の企画に関わっています。
今年の夏から秋の学会は、軒並みキャンセルされてきました。
しかし、1週間ほど前から中止・延期するのではなく、オンライン学会にしたらどうかというアイデアが浮上してきました。9月に開催予定の二つの学会で、今、どうしたもんだろうかとオンライン上でメールで議論しています。
正式な学会が開けないので、縮小版・限定版としてのオンライン会議
という発想を超えて、従来の学会を超えた次の世代の学会のあり方として考えることもできるのではないでしょうか。
学会とは、
同じ分野を研究する人たちが交流して、
最先端の研究を発表し合う、、、
ことが目的です。
これを紙ベースでやるのが学会誌。
みんなが集まってやるのが学会です。
オンライン学会の可能性(positive)と限界(negative)について考えてみました。
場所と時間の縛りから解放される
学会は、2-3日の決まった時間に、あちこちから集まって一つの場所に集約します。
オンライン学会ではその必要がありません。
家からでも、どこからでも参加できるというのはとても便利です。
集まるために、2-3日、予定を調整してその期間中は学会だけに専念します。
(中には、学会という名目でゴルフとか観光とか遊んでる人もいますが)
オンライン学会ではその必要がありません。
週末とか、夕方の時間とか、人が都合をつけやすい時間に小分けにして開催もできます。
記録に残せる
口頭発表や講演は言いっ放しで、録画でもしない限り残りません。
ポスター発表も、学会が終われば撤去します。
オンライン学会ではネット上に流すので、録画のための特別な装置なしで簡単に録画できます。
そうすれば学会期間中に限定せず、その前後の期間にウェブサイトから観ることもできます。
さらに発展させれば、その前後だけとか言わずに、アーカイブとして一年中いつでも観れるような設定も可能です。
境界をどう作るか?
学会はふつう、会費を払った学会員しか参加しないクローズドです。オープンにはできない情報(クライエントのプライバシーとか)も含まれているので。
オンラインは基本的にオープンです。
自宅からアクセスすれば、宅急便がやってきたり、子どもがチョロチョロまとわりついたり、プライベートとの境界が曖昧になります。
大会費を払ってパスワードをもらったとしても、友だちに教えれば誰でもアクセスできます。そんなことしてはいけませんと規約をチェックしたところで、誰にもバレません。
そのあたりの境界線をどううまく作るかが課題です。
いっそ、みんなオープンにしちゃったら??
学会誌は図書館に行けば誰でもアクセスできますから、そんな感じで。
クライエントにもプライバシーを確保した形でオンライン学会で発表して良いですか、と了解を得たら良いのでは。
情報格差を生む
新しいツールを導入しようとすれば、必ずそれを使えない(使いたくない)人たちが出てきます。そういう人たちにどう納得してもらい、疎外せずにアクセスできるようにするかという工夫が大切です。
10年前、私が大会長の時に、参加・演題申し込みを全てネットにしようと提案したら、「私、使えませんから!」という人が少数ながら出てきました。今ではそんなこと言う人いないでしょうけど、当時はそういう時代でした。
通常のリテラシーは知識・経験がある人ほど高いものですが、
ことメディア・リテラシーに関しては、おおよそ人生経験と逆比例します。
若い世代がオンライン学会やりましょうと言い出して、理事会とかのお偉いさん達が納得できるか否か!?
それができる学会は、組織のレジリエンス・柔軟性が高いと言えるでしょう。
学会発表形式も色々なバリエーションが考えられます。
スタジオ収録
前もって発表をZoomかなんかで録画して、学会のウェブサイトにアップしてもらいます。
Zoomではパワーポイントなどなんでも「画面共有」できますから便利です。
ナマ放送
学会当日に、ライブで発表します。
発表した後、参加者と共に質疑応答もできます。
ビデオでやっても良いし、チャット欄に文字で質問・コメントをもらうこともできます。
昔、何度かテレビ出演したことがありますが、ナマ放送はガチガチに緊張しました。
トチったらどうしようって!
私が、若く駆け出しの頃、学会の口頭発表は心臓が飛び出るくらい緊張しました。
質問がきて突っ込まれたらどうしよう、、、!!
原稿を読み終わったら脱兎したい気持ちでした。
今は、なんも緊張しません。
逆に質問が来なかったら、私の発表は面白くなかったのかしら、興味を持たれないのかしらと心配になります。
私がオンライン学会で発表するとしたら、
若い未熟な頃だったらスタジオ収録を、
今だったらナマ放送が良いです。
ポスター発表と口頭発表
、、、の境目は曖昧になります。
多くの研究者にとって国際学会で発表すると業績のポイントが高くなります。
英語が不得意の先生はポスター発表を好みます。
口頭発表だと、前もって作った原稿を読み上げれば良いのですが、その後の質疑応答がチャレンジです。
スタジオ収録したビデオ発表でも、ポスターに書いた文字ベースの発表でも、学会ウェブサイトにアップして、質問・コメントをウェブ上に書き込んでもらって議論すれば、どっちも同じことだと思うんですけど。
無観客試合
大相撲でも野球でも、力士や選手にとって無観客試合ってどうなんでしょうか?
とりあえず対戦相手が目の前にいるので頑張りますが、応援もブーイングもないんですよ。
学会では、シンポジウムがこれに相当するでしょう。
何人かのパネリストがディスカッションして(オンラインでもリアルでも)、観客はオンラインで観戦します。
パブリック・ビューイング(メディア・ミックス)
以前、子どもに連れられてスポーツパブに行き、サッカーの試合を観戦しました。大きなスクリーンを観ながら、パブに集まった人たちと盛り上がるんですね。
発表者側も、観客側も、リアルとバーチャルの選択肢を与えるという発想です。
一応、リアルな会場は設定して、そこに来る発表者と、オンラインから発表する人と。
観客も、会場に来る人と(三密は避けて)、オンラインで観たい人と。
会場を北海道・関東・関西・九州とか複数に設定すれば、全国から集まれます(そこまでするのも大変か!)
ライブハウス
うちの学会だと自主シンポやワークショップがこれに相当するでしょうか。
比較的小さな部屋で、発表者が話題提起やレクチャーした後、聴衆の参加がメインになります。小グループに別れてディスカッションしたり、ロールプレイをしたり。
新型コロナもライブハウスがクラスターになったくらいですから、参加者同士のやり取りが最も濃密です。
これをオンラインでやるのはチャレンジですね。ZoomをPCで使えば5x5=25名くらいのモザイク画面を使って相互のやり取りもできるような気がします。小グループにわけて、、、というのも技術的には可能だと思うのですが、私はわかりません。
うちのワークショップは午前・午後まる一日やりますが、オンラインでは長すぎるのでは。もっと短くして、ネット上にアーカイブしても良いのでは。。。
ライブ・コンサート
特別講演とか基調講演とかが相当するでしょう。
大きな部屋で偉い方のご講話を1時間くらい聴きます。
海外の学会では講演の後の質疑応答・ディスカッションも盛んですが、私の知ってる国内の学会では、質疑応答は無しか、あってもチョボチョボです。
ほぼ一方向的な情報伝達ですからスタジオ収録でも無観客試合でも可能でしょう。
。。。と思うのですが、出演者側にとっては違うんですねぇ。
スタジオ収録とコンサートではノリが全然違います。
トチることを考えればスタジオ収録の方が安全なのですが、コンサートの臨場感が出演者のパフォーマンスを盛り上げます。
陸上の走り幅跳びの選手は、観客に拍手をリクエストして盛り上げますね。べつに目立ちたいからやってるわけじゃなくて、その方が良い結果が出るんですよ。
サッカーのサポーターは12人目の選手、、、
選手と観客が一体となって、、、
壇上のスピーチを聞いている観客の立場からすれば、自分の存在は黒子のように感じると思いますが、壇上からはよく見えるんですよ。
表情や眼差しから、どれくらい乗ってるか、興味をもって聞いてくれているか、飽きているか、居眠りしているか、、、
笑いや頷きや拍手があると、なるほどここでみんなは反応するのねと、出演者もますます盛り上がります。
大学で教えていた頃、自分の研究分野で興味がある授業は熱心に話しますから、学生たちの目も輝いて、面白そうに聞いてくれるのがよくわかります。教員も盛り上がり、授業に力が入ります。
逆に、カリキュラム上割り当てられた消化試合の講義はこっちもやる気がなくて手抜きの授業になり、学生たちもつまらなそうに聞いています。すると、教員もやる気を失い、ますます手抜きになります。
で(ここからが本題で:笑)、私の基調講演なんですけど、そういうわけでスタジオ収録や無観客試合はモチベーションが上がらないんですよ。できたらこんな風にしてもらったらと思うのですが、ご検討ください。
持ち時間が60分だと思うので、
- 1時間弱くらいのスタジオ収録で、前もってスピーチをお送りします。
- 1−2週間前くらいにウェブサイトに上げてもらい、参加者に前もって観てもらい、感想・コメント・質問などを集めます(多くの人は観ないと思いますが)。
- 当日は無観客試合。お送りしたスピーチと同じ内容を30分くらい手短に喋ります。
- その後、参加者からのフィードバックを紹介してもらい、それに応える形で話をさらに深めます。
- もし可能なら、この部分をA先生との対談という形でも面白いかなと思います。
まあ、私としても初めての試みなので、どうなるかやってみないとわかりませんが(笑)。
懇親会(ラウンド・テーブル)
若い頃、学会の懇親会は苦痛でした。
ご馳走とお酒を飲みたいからとりあえず参加して、偉い先生と話がしたいなと思っても、とてもセンターテーブルまで行く勇気はなく、一番末席のテーブルからビールをもらって、壁の花になっていました。
今となっては、センターテーブルに陣取り、学会で繋がった友人たちと歓談し、一番の楽しみになってしまいました。
これをオンラインでやるのは流石に無理かと思うのですが、その代替としてAFTA (American Family Therapy Academy)でやってるRound Tableをご紹介します。
10名くらいから多い時で30名くらい、新人からベテランまで参加者がひとつの部屋に集い、一人ずつ、学会の感想やら言い足りなかっことなどを語ります。基本的に言いっ放しでディスカッションはしません。それだけで1-2時間はゆうにかかってしまいます。
これならオンラインでもできそうな気がします。
懇親会の二次会(かなり余談)
親しい少人数の仲間たちと個別に繰り出すわけですが、
例えば、特定のテーマについて集まってZoom飲み会をするとか。
禁酒の真面目な集まりとか、お酒OKの気軽な集まりにするとか。
学会誌・学術集会(学会)に継ぐ第三の発表手段
学会誌もオンライン・ジャーナルが主流を占めてきました。
上記のように、学会発表の収録・保存も技術的に十分可能になってきました。
テキストベースの学術論文のみならず、学会での各種発表も研究成果の発表ですから、
学会期間中に限らず、ウェブサイトに残せば画像・動画ベースの学術論文になります。
学術誌の伝統は「査読」です。
これを通せば、箔がついて業績となります。
オンライン上でも査読は可能だと思います。
例えば、アップロードされた学会発表のうち、学会の編集委員なりが認めたものに「認証」マークを付ければいい訳です。
あるいは、認証されたものだけをウェブサイトにアーカイブするとか。
ーーーー
とまあ、アイデアは尽きません。
いろんな可能性があります。。。
0 件のコメント:
コメントを投稿