2013年8月3日土曜日

ひきこもりの家族関係(1)

先生はひきこもりの家族をたくさん診られていると思いますが、その共通点は何ですか?

はい、急にふられたので考えてみました。
どの家族も千差万別、ひとつとして同じ状況はありません。
しかし、あえて共通点を探そうとすればいくつか見つかります。

あなたの家族の場合、
本人が内面に取り込んだ高い目標設定を乗り越えることができない状態です。

このような状況は他のひきこもり家族にも見られます。
子ども時代に(学校の先生からもありますが、主に)親から高い期待値を与えられ、親からの承認を得ようと子どもはがんばります。ある段階まではそれが達成され、本人にとってのアイデンティティとして内面化されます。
しかし、学年が上がり目標にどうしても達成できなくなります。100%達成できなければ6割か7割で良いじゃないかと自分自身に折り合うことができれば良いのですが、それができないと100%かダメなら0%しかありません。そうやって全面的に撤退してしまいます。

6割か7割の自分と折り合うことは簡単なようで難しいものです。
10割を達成できなくなり傷ついた自分を承認してくれる他者が必要です。
その他者は、子どもに期待し目標を設定した親です。
そのためには一方的に言い渡された目標設定ではなく、親子の間でnegotiateし、調整しうるだけの親密な関係が必要です。ケンカしてもいいから言いたいことを言える関係です。
しかし、残念ながらお子さんと父親との間にはそれを達成できるほどの深い関係性がありません。

お子さんは、今、とても苦しんでいます。自分自身に課し、内面化した目標を再調整することができず、前に進めず将来への希望をなくしています。
と同時にご両親も深く絶望していらっしゃいます。

お子さんはとても聡明な方です。
今は何もせず、ただインターネットで遊んでいるだけで、考えることを止めてしまったように見えるでしょう。しかし、しっかり考える力を持っています。だからこそ、考えることをあえて止めているのです。

繰り返します。お子さんは考える力と、今の逆境を乗り越える力を持っています。
しかし、今の逆境を乗り越えるための文脈(関係性)を失っています。
その作業はひとりでは不可能です。他者というtemplateがいて、向き合い、関わり合う中で自分のアイデンティティを進化させることができます。
その他者は友人、教師、カウンセラーなど信頼して深く話し合える相手ならだれでも構いません。
しかし、残念ながら今はそれらの関係が失われています。
唯一、残された関係は親子関係です。

本人を成長させるのは、本人自身の力でしかありません。他者がそこに介入することは出来ません。しかし、本人の力を発揮する文脈を他者が整えてあげることができます。
他者との関係性が失われたひきこもりの場合、親子関係が残された関係性として絶大な力を発揮します。
親子関係をてこにして、お子さんはひきこもりから立ち直る力を獲得することができます。

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