2019年11月8日金曜日

子どもの死の乗り越え方

学生時代の友人アツシが、息子を亡くしました。

このたびはご丁寧に弔電を送っていただき、本当にありがとうございました。
仲間からの励ましがどれだけありがたかったか、言葉になりません。表面上は何とか取り繕っていても、心にぽっかり穴が空いています。気持ちの整理をつけて、少しでも早くカムバックしたいです。というより、そうしないといろいろ考えてしまってつらいので。

仲間のテツヤからのメールです。

すっかりご無沙汰してます。いつも楽しくニュース・レターを読んでます。
昨日の葬儀に参列し、沢山の弔電が読み上げられる中に田村の名前もありました。愛情あふれる喪主アツシの挨拶からも、計り知れないご家族の悲しみの深さを垣間見ました。

アツシ、葬儀に駆けつけられずすまん。
お詫びに喪失の悲しみの乗り越え方について伝授します。
これは私自身が10年まえに妻を失い乗り越えてきた経験から、
そして、喪失を体験した多くのクライエントを支援(grief therapy)してきた経験からのお話しです。
多分、今の段階では乗り越えたくなんかない、今のまま時間を止めたいみたいに思うかもしれないが、残念ながら、人間には忘却力があるんですよ。
いつかは記憶は薄らいでいきます。
しかし、胸に突き刺さった大きな悲しみはそう簡単でもありません。

要点としては、感情を言葉に表し、表出することです。
悲しみの感情を想起するのはとても辛いものです。思い出せば仕事ができないし、日常生活が成り立ちません。
普段は考えずに、気持ちを封じ込めておくしかないけど、まあ1−2ヶ月は仕事にならんことは覚悟しておいてください。思考力を使わない単純作業ならできると思うけど、判断力や意思決定能力を使おうとすると悲しみの感情も飛び出してしまうので、なんとも厄介です。しばらくは無理せず仕事のペースを落として下さい。

安全な場所で、安全な人に、気持ちを表出して下さい。
心の痛みのウミを掻き出すイメージです。傷口に触れるのは飛び上がるほど痛く、その時は気持ちが混乱して(涙が溢れたり)収拾がつかなくなるのだけど、信頼できる人が受け止めてくれると痛みがとても和らぎます。アツシも既に仲間のありがたさは経験済みですね。
いろんな表出のやり方があります。
言葉として、仲間に飲みながら語り尽くしても良いし。
書き言葉で表現しても良いです。日記とか、メールとか。
私は10年前に、友人に勧められてブログを書き始めました。
仲間が読める公開に設定して、読んでもらうと助かりました。
感情のエネルギーを運動エネルギーに変換することもできます。
私は自転車やスキーや、身体を動かすことで癒されていました。アツシもスポーツが好きだから良いかもしれない。
私の場合、文章を書いて自分を表出するのは良いのだけど、文章を読んで他者を受け止めるのはもうちょっと先でした。だから、今の段階でアツシにこの文章は届けても無駄でしょう。1ヶ月くらい経ってからの方が良いかな。
巷には「家族を失った手記」みたいな本がたくさんあります。
優子を失った当初は読む気持ちにはなれなかったけど、半年を過ぎるあたりからそのような本やGrief Therapyの専門書をたくさん買い込みました。実際に読んだのはその半分くらいかな。
他人の話を受け止める(input)よりは、自分の話を表出する方(output)が良いです。私の場合はね。

あと家族ね。
親から順番にいくならまだ良いのですが、親が子ども失う逆縁は一大危機ですよ。
それは試金石でもあります。
危機とは、危険=danger + 機会chance
それは、家族の結束を強めるチャンスか、家族がバラバラになるかの分水嶺です。
家族みなが深い悲しみの傷を負いました。家族がお互いに、普段はそこまで掘り下げる必要のない深いレベルまでshareできれば、絆と信頼を深めることができます。そこまでできるのはかなり高等技術なのですが。
逆に、辛いので家族がお互いに気持ちをシャットアウトすると溝が深まります。
世間を騒がす重大な犯罪者を出した家族がバラバラになり離婚するのもそういう理由からです。

伝統的な性役割家族では、父親よりも母親の苦しみが大きくなります。
男性は仕事という逃げ場があります。女性は子どもとの距離が近く子どもが生きがいという部分もよくあります。女性のそのような立場と心情を夫が理解することが重要です。

あと自死の場合、遺族が受けるインパクトは非常に深刻です。
病死なら原因を病気が引き受けてくれますが、
自死の場合には、原因探しをしなくてはなりません。
なぜ気づいてあげなかったのだろう、救えなかったのだろうと自分を責めたり、あなたに要因があるでしょとパートナーを責め、夫婦関係が危機に陥ります。

悲哀の仕事(mourning work)は病気ではありません。誰でも経験する心的プロセスです。
しかし、下手すると病気になってしまいます。
気持ちを抑え込もうと心に布団をかけて覆ってしまうと、意欲や思考力といった心の働きまで使えなくなり、「うつ」になります。
うつは自覚症状がない場合も多く、自分ではうつと思わなくても、周りからみるとうつ状態だったりします。
私も10年まえ、自分がうつになるのが怖くてgrief therapyにせっせと通いました。
悲しみをどう乗り越えられるか。メンタルの強靭さが試される場面でもあります。

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で、ここからは仲間たちに告ぐ。
友達は大きな支えになります。
自分の悲しみを他者が理解してくれて、その人の心の中に乗せてくれる(共感する)と、とても楽になります。
私も、疎遠になっている旧友がわざわざ訪ねてきてくれたり、一緒に飲もうと誘ってくれたことがとても助かりました。しかも故人をよく知ってる共通の仲間だからね。
人によっては、人と交流せずひとり静かにしておいてほしいというタイプの人もいますが、アツシは違うでしょう。

みんなの顔を式場で見ることで、どれだけ気持ちが慰められたことか!

とか言ってるくらいだから、どんどん声をかけてあげて下さい。
手続きが一段落する2-3週間後から半年間くらいが一番辛く、それを過ぎれば少しずつ薄らいできます。Mourning workをうまく進められないと1−2年、あるいはもっとそれ以上に長引くことがあり、そうなるととても辛いものです。

アツシなら大丈夫だと思うけど、みんなで支えてあげましょう。

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