2021年1月21日木曜日

ひきこもり連載(3)二重のひきこもり

 ひきこもり:求められる支援(3)
公明新聞 2021.1.7.
二重のひきこもり
親も人に知られることを回避

10年以上ひきこもっている次郎さん(仮名)のことは、ご両親にとって深刻な問題です。自室に閉じこもり、家族と食事をすることもなく、母親と必要最低限の会話をするだけです。本当は、これからどうしたいのかを話し合いたいのですが、以前に、その話題を持ちかけて大変なことが起きました。以来、その話題には触れず、腫れ物のように関わってきました。

ひきこもりは親のせい、不適切な養育が原因だという「家族原因説」が世間にはびこっています。そのために親は自信を失い、家族の恥と感じ、周りの人に支援を求められなくなります。

確かに、子どもをしっかりした人間に育て、自立させるのが親の役割です。子どもがいつまでも自立できなければ、親がその役割を十分に果たせなかったと考えるのもよく分かります。

親としても思い当たることもあります。仕事が忙しかったから、親自身の生活が大変だったから、親がストレスを抱えていたから。さまざまな理由から、子どもにキツく叱り過ぎた、あるいは先回りして心配し過ぎたなどと反省する親は少なくありません。

世の中の親たちは気付かずに、たくさんのマイナスを子どもに与えます。しかし、それでよいのです。完璧な親はいません。それでも子どもは育ちます。親はマイナスだけでなく、たくさんのプラスも与えているはずです。

多くのひきこもり家族は「二重のひきこもり」に陥っています。本人は自信を失い、他者のまなざしを気にして人との関わりを回避します。親は子どもに接する自信を失い、わが子のひきこもり状態が人に知れることを回避します。

社会のひきこもり支援は、まだ不十分ながらも以前に比べれば整いつつあります。ひきこもりの解決は、二重のひきこもりから回復することを意味します。その第一ステップは、家族が社会の支援とつながることです。家族が具体的にできることを次回ご説明します。

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