2012年11月30日金曜日

二種類の家族エネルギー

A子は友だち関係で傷つき、ホトホトしんどくなり、学校に行けなくなってしまいました。
友だちと一緒にいたいのだけど、自分が普通にしていたら嫌われちゃうと思い込んでいます。嫌われたくないから、誰からも好かれようと必死で明るく元気な姿を見せています。ホントは自分がとてもキライで、いくら取り繕っても良い人になれません。友だちの気持ちをとても気にして、何気ない一言に深く傷つきます。ホントは「傷つくからそんなこと言わないで!」と言いたいのだけど、とてもそんなこと言えません。
自己肯定感が低いので、それをどうにかしたい。お母さんと相談して、ひとりでカウンセリングにやってきました。自分がちゃんと学校に行けていないので、お母さんに申し訳なくて。

そうなんだ!とても親思いなんだね。、、、でも、お父さんにも申し訳ないとは思わないの?
いえ。お父さんはどうでもイイんです。
お父さんは金八先生や松岡修造タイプなんです。

えっ、それどういうこと?
情熱ゴリゴリというか、私に何かあると「A子、がんばれ!」と情熱的なメールを送ってきたり、ちょっと帰りが遅くなるとすごい勢いで怒るんです。
以前は親が絶対だったから、ただ怒られていて、身体が震えて過呼吸になったこともありました。
でも、今はお父さんも反省して少しマルくなりました。
私が考えすぎたりネクラなところはお父さん譲りなんです。昔は怖いだけだったけど、今はお父さんも打たれ弱いんだなと思うようになり、時々フォロー入れたりしています。

思春期はとても困難な時期です。たくさん傷つきます。無傷で通過することはまず不可能でしょう。
つまづくのが当たり前。不安や恐怖に満ちています。大人になるって、自分に自信を持つって、すごく不安なことです。まわりの人は自分のことを受け入れてくれるのだろうか。みんなから嫌われないだろうか。いつも心配だし、そんなことを考えていたら人に会いたくなくなるのも当然でしょう。

親は子どもを愛し、たくさんのエネルギーを注ぎます。
そのエネルギーには二種類あります。

親のPositiveなエネルギーとは、プラスの結果を予測します。
あなたは基本的にOKね。今とても苦労しているけど、きっと大丈夫。壁を乗り越える力を持っているね、、、という安心の眼差しを子どもに注ぎます。
そういう前提があれば、多少困ったことがあっても焦らず、あわてず、少し離れた位置から子どもを見守ります。あまり過剰に先回りして手を貸したり、怒ったりしません。基本的に子どもに任せるけど、もし子どもが心細くなって親の元に戻ってきたら、優しく休ませてあげればよいだけです。
親のpositiveなエネルギーを受け取った子どもは、辛く、傷つくことがあっても、まあ何とかなるかなあ、きっと何とかなるよ、、、とのん気に構えてその場に居続けます。するといろいろな経験をする中で、イヤな体験にへこんで元気を失い、良い体験に元気をもらいながら、だんだんと成長してゆきます。

親のNegativeなエネルギーとは、常にマイナスの結果を予期します。
  • この子は大丈夫だろうか?
  • ダメになっちゃうんじゃないだろうか?
  • とりかえしのつかない何かが起きてしまうかも、、、?
と常に不安・心配の眼差しを子どもに注ぎます。
だとすれば、親としてはマイナスの結果を未然に防止しなければなりません。先回りして心配して、とても過保護・過干渉になったり、とても厳しく叱ったりします。
子どもは親の気持ちに敏感ですから、親のnegativeなエネルギーをじかに受け取ります。傷ついたら自分はダメになっちゃうんじゃないだろうか、自分は傷に耐えられないんじゃないだろうかと、傷つくことをとても怖れ、傷つきを避けようとします。でもそれは不可能だから、傷つくことを防ぐためにはひっこむしかありません。
そうやって、うまくいかない兆しが子どもに現れると、親はさらに心配してnegativeエネルギーが増大します。それを子どもがもろに受け取って、子供もnegativeに、、、という悪循環のサイクルに陥ります。

ここでフットボールの比喩を思いつきました。
私は大学時代アメフトをやっていました。
心配性のコーチと安心感を抱えたコーチがいました。
ゲームなんだから、どちらかが勝って、どちらかが負けるわけ。どうにかして勝たせたいとコーチは必死です。

心配性のコーチはかなり出過ぎます。選手たちは自分の力で戦わなくてはならないのに、サイドラインから「あーしろ、こーしろ」とメガホンで怒鳴り、やたらうるさいです。選手の中でもクォーターバックがゲームの司令塔です。プレイの度にハドルを組んで、次のプレイの展開をみんなに伝えます。不安なコーチは、しょっちゅうサイドラインから伝令を飛ばし、次のプレイはこれで行け、あれで行けと細かく指示します。QBは自分の考えでプレーを出すか、コーチの指示に従うべきか悩んでしまって結局うまくいきません。

どっしり安心感のコーチは、練習の時は細かくうるさいけど、試合になったら選手に任せます。腕を組んでじっとプレイを見つめ、ギャーギャー騒ぎません。ファーストダウンやタッチダウンを取った時は、ガッツポーズで「よし、やった!」としっかり承認を与え、一緒に喜びます。
選手が行き詰まりどうしようもなくなった時にはコーチがタイムアウトをとります。その時はQBと主将をサイドラインに呼んで、しっかり明確な指示を与えます。でも、タイムアウトはひと試合に3回までしか許されません。3回とってしまったら、あとは選手に任せるしかないのです。

子どもは思春期というゲームを必死に闘っています。親コーチはどう取り組めばよいのか、悩ましいところです。

どこから親のnegativeエネルギーはやってくるのでしょうか?さまざまな場合があります。
  1. ホントに心配しないといけない弱い子どもの場合です。小さいころから病気を抱えていたり、虚弱体質だったり。親がカバーしないと生きていけません。
  2. 親自身が子どもの頃、自分の親がそのように接してくれた場合です。親はたくさん心配するものだから、親として当たり前のことをしているだけ、、、と考えます。祖父母⇒親⇒子へとnegativeエネルギーが世代間伝達されます。
  3. 子どものこととは全く関係ないが、親自身の人生に不安や困難を抱えている場合です。

どこから親のpositiveエネルギーはやってくるのでしょうか?
  1. とても元気で優秀な子どもの場合はどうでしょう?「親の七光り」の逆バージョン、「子の七光り」で親が元気をもらえる場合もあります。しかしどんな子でも思春期はつまづきますから、このようなケースはあまり想定できません。
  2. 親自身が子どもの頃、自分の親がそのように接してくれた場合です。親は子を信頼して見守っているものだから、親として当たり前のことをしているだけ、、、と考えます。祖父母⇒親⇒子へとpositiveエネルギーが世代間伝達されます。
  3. 子どものこととは関係なく、親自身がまわりから多くのpositiveエネルギーをもらい、安定した人間関係をキープしている場合です。安定して信頼できる夫婦関係、親子関係、友人関係などを持っていると、そのエネルギーを子どもへ伝えることができます。
家族カウンセリングもこれと似ています。安定しているカウンセラーと信頼関係をしっかり築き、大量のpositiveエネルギーを吹き込みます。それによって家族内のnegativeな悪循環を断ち切り、オセロの黒を白にひっくり返します。

Q)どうやってpositiveエネルギーを吹き込んでくれるのですか?
A)それは多くの経験から生み出された秘伝の隠し味です(笑)。
  どうぞゆっくり味わってください。

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