10年以上前に親しかった同僚の紹介で引き受けたのですが、面白かったのは打ち合わせです。普通、事前の打ち合わせはメールや電話で済ませるか、丁寧な場合は訪ねてきてくれてお会いして打ち合わせます。今回は、いきなり飲み会の打ち合わせでした。こういうのは初めてです。
学校の先生は飲むのが好きな人が多いのですが、関連する先生方8人くらいが集まり、お酒を飲みながら講演について話し合いました。実例に基づいた話の方が興味を引くしわかりやすいので、飲み会に参加した若手の教師ふたりにお話ししてもらい、それを受けて私が話すことにしました。
講演のタイトルがまだ決まっていないということで、皆さんであーでもない、こーでもないと知恵を絞り、まとまったのが、
というタイトルです。よく考えましたね。「教師の思い・子どもの気持ち・親の心配」~学校現場の実例を精神科医がひもとく~
後日、講演の要旨をまとめてくれたので、ご紹介します。
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本講演会は、講師の田村先生の提案により、小学校の先生お二人にも前に出てきていただき対談のかたちで行われました。
対話と連携
日頃から大切にしていることは、対話と連携。対話することによって問題が発見され、解決していく。
人と人との関係性に焦点を当てることが大切。子ども、保護者、教師などの個人レベルの能力や資質により精神的な問題が生じるという視点がある。それと共に人と人との関係性の中で問題が生まれるという視点もある。この場合には、関係性に焦点を当てて改善することにより、問題が解決していく。
安心感から信頼感がうまれ、行動が変わる
相談に来る子ども達の中には、自分自身の状況や気持ちをうまく表現できない子も多い。それでも小学校ではかろうじて適応していることも多い。しかし、これから先つまずくことが予想される。ストレスを抱えていても言語化できず、行動化(不登校、暴力、いじめなどの問題行動)、身体化(お腹が痛い、じんましんがでてくるなど、体に何らかの症状が出る)などで、自分の状況を伝えようとしてくる。周囲はそのサインに、気づいてあげることが必要。
多くの場合、安心できない家庭環境があると子どもは人との関係性を作ることに不安をもつ。友達と関係性を作っていくときに怖さが全面にでて、その反動として攻撃性がでてしまうときもある。支援する時には、家族・家庭の中での安心感を作っていくようにしている。家庭環境から安心感や信頼感が生まれてくると、学校での子どもの行動が変わってくる。
必要なのは承認されたという原体験
不登校、ひきこもりは、愛着の問題であることが多い。子どもはクラスの中で友達や先生と関わりながら学校の中で自分の居場所を作っていくが、不登校、ひきこもりの子どもは、その体験が少ない。学校に行くのが嫌になってしまう、教室の中に溶け込めない、自分の居場所として認知できない。子どもたちにとって、先生は味方だということが分かると、先生との愛着関係が生まれる。すると学校が安心できる居場所になり、人との関係を築きやすくなる。信頼できる人に承認されたという体験が子どもにとって大切。
また、小さい頃は自分の思い通りになる世界「ピーターパンの世界」を誰でももっている。小さい頃、自分の欲求が満たされたり、自分を全面的に愛して受け止めてくれる人がいることで、子どもの自己肯定感が育っていく。だがそれがうまく育まれていないと、大きくなるにつれて自分の思った通りにいかないと挫折し、周囲を拒絶してしまう。自分が信頼している人から承認された体験を家庭や学校の中で積み重ねていくことが大切である。
まずは保護者自身の「安心感」から
子どもが親離れできない背景には、親が子離れできていない場合がある。親が、親と子どもは別の人生だということを理解する必要がある。だが、親自身が孤立感、孤独感をもって生活をしていると、無意識のうちに子どもを取り込むことで、親自身の心の安定性を得ようとすることがある。本人に自覚がないことが多いが、客観的にみると分かる。親自身が、不安、ストレス、困難さをもっている場合、子どもが親から自立するのは困難。親の心の元気さを作っていってあげることが必要だが、学校の先生は教育のプロであるがカウンセリングのプロではない。学校だけで家族の問題を解決することは難しい場合も多い。家族の話を受け止めつつ、カウンセラー、養護教諭などや外部機関につなぐことが必要である。
支援のバトン
ひきこもりや発達障害などの問題を家族だけで抱え込むケースが多い。もっと社会の問題としてとらえるべき。そのために学校ができることは、支援のバトンをつなげることだ。
本当に困っていて不安な人は自信を失い、外部に助けを求めることができない状態になる。困っている親がまず口を開く相手は、学校の先生である場合が多い。その内容が子どものことではなく家庭の問題、夫婦の問題であったとしても、一旦話を聞いてあげることは、親にとっては肯定的な体験になる。子どもの先生が、親である自分の悩みまで聞いてくれたということが、気持ちを前向きにする。
第一支援者となる学校の先生が親の話を聞いて受け止めてあげることで肯定的な気持ち、前向きな気持ちになりヘルプを出せるようになることもある。親の閉ざされていた心が開かれて、外部との信頼関係が生まれる。すると他の機関とも繋がりやすくなる。成功体験をステップにして、信頼関係のバトン、支援のバトンを繋げていくことが大切である。
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