参加者たちは、みな精神科医や心理の専門家なので、臨床場面でのクライエントの話がテーマなのですが、突き詰めて話し合っていくと、自分自身と自分の家族の話に立ち戻っていきます。参加者の多くは、自分と親との関係が解決されないまま心に残っていることがわかります。特に、男性の場合は父親との関係が、女性の場合は母親との関係を問題にしているように思います。
家族というものが、どれだけ矛盾に満ちたものであるか、それは問題を抱えた家族に限らず、だれにでも存在することを思い知らされました。たまたま専門家として家族に関わる必要性から自分の家族を見つめ、通常は見過ごされる矛盾を言語化できる機会を得たから明確に見えてくるのですが、それは誰でもが持つ普遍的なことでもあるのです。
自分の感情や体験を否定することなく、どれだけ自分を理解し、それを表現できるか、それが人間として、治療者としての大きな力になることを体験しました。参加者と共に、自分の家族について、自分の父親についてたくさん語り合いました。ちょうど精神分析家がその訓練として教育分析、つまり自分自身の無意識について分析するのと同じように、家族療法家の訓練として、自分の家族について深いレベルで考えるきっかけとなりました。
「家族で往復書簡のすすめ:新しい父親像を発見するために(彩流社)」より抜粋。
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