2013年4月21日日曜日

誰が問題なの?:夫婦カウンセリングの考え方

  • うちの妻をどうにか治療してください。妻は精神的に異常です。うつ病なのでしょうか。とにかく、まともに話ができません。ヒステリーになって怒ったり、私を無視したりします。このままでは私の身が持ちません。
  • うちの夫を診てください。病気なのでしょうか?病気なら治療してください。ネットで調べたら「〇〇障害」や「〇〇病」の説明がよく当てはまります。言うことや態度がヘンなのです。話が全く通じません。
このような形で夫婦カウンセリングが始まる場合がよくあります。

たとえば、夫が「妻はヘンです。治してください。」と依頼があります。
承知しました。奥さんとお会いしましょう。
すると、妻は「夫がヘンです。治してください。」と逆に依頼されることがあります。
あれあれ、どうなってるの??
そこで専門家として客観的に判断します。次のようなケースに分かれます。
  • 夫も妻もふたりともクロ(病気などの問題を持っている)の場合。
ふたりのお話をうのみにするとそうなってしまいます。でも、実際にはそういうケースはまれです。
  • 一方がクロで、もう一方はシロの場合。
クロの方の治療を始めます。パートナーから依頼された場合はパートナーにも治療に協力してもらいます。
  • おふたりともシロの場合。
夫婦カウンセリングを行います。
おひとり、おひとりは良識を備えた良い方(シロ)なのですが、ふたりが重なると何故かクロになってしまいます。
その場合、その人にとって相手がクロと判断する状況について丁寧に伺います。
おひとりからだけではなく、もうひとりの方からも同じようにお話を伺います。
それを重ね合わせていくと悪循環のループにハマっている状況が見えてきます。
〇〇年前に結婚した時はあんなにハッピーだったのに、、、
当時から現在に至るどこかに、解決できない問題の根っこが隠されていたりします。
第三者からは客観的にその根っこが見えても、渦中のご本人には見えないこともあります。
あるいは、夫婦それぞれ根っこの見え方が異なることもあります。
根っこが解決されないまま放置状態なので、ふたりで話し合ってもプラスの結果が得られません。
いくら話し合ってもマイナスの出力しか得られず、お互いに傷つけあってしまいます。残念なことに。
何度か繰り返すうちに、もう傷つきたくない、、、という気持ちからそのことは触れないようになります。
その後もずっとお互いを避け通すことができれば良いのですが、実際の家族生活はそういうわけにはいきません。仕事のこと、お金のこと、子どものこと、実家のこと、双方の友だちのこと、、、、
話し合ったり協力しないとやっていけないさまざま課題に直面します。
意を決して話し合いますが、前の経験がよみがえってきます。
またうまくいかないんじゃないだろうか、、、という不安から防衛的になり、はっきり伝えられなかったり、黙ってしまったり、イライラしてしまったり、、、ああ、やっぱりダメだ、話し合えない。
話し合えないから黙ると、今度は黙ることが「無視された。ちっとも考えてくれていない!」という火種になり、悪循環のループにどんどんハマってしまいます。
そうなると、二人だけだと話し合いも黙り合いも、どんどんダメな方向に落ちてゆきます。
ふたりだけならまだよくて、仕事に影響が出たり、子どもに影響が出始めます。
これはもうどうにかしなければいけません。

こういう場合は、第三者を交えて話し合うことが功を奏します。
ホントはふたり話し合いたい、話し合わねばならないんです。でも、話し合えない。もう傷つきたくない。話し合う元気も残っていない。
夫婦カウンセリングは安全な土俵を提供します。
やっぱり夫婦は話し合いたい、バトルをしたいです。
安全な土俵と行司のもとで、思いっきりバトルしてもらいます。
お互いに、言いたいこと、伝えたいことの槍を投げてもらいます。
お家でふたりだけでやってしまうと、槍が刺さってお互いに傷ついてしまいます。
夫婦カウンセリングの土俵では、傷つかないようにしながら槍を投げ合います。
飛んでくる槍を行司がちょっと細工して傷つかないように弱毒化して相手にパスします。

安全だけど思いっきり投げ合うバトルに耐えて何戦か交えていくうちに、だんだんコツをつかんできます。相手に致命傷は与えないけど言いたいことをうまくはっきり伝えられるようになります。飛んできた槍を真正面から受けず、ひょいとかわしてやり過ごすこともできるようになります。
手持ちの毒矢を全部投げ終わると危険は去ります。あとは素手でしっかり四つに組んで、ふつうの無害な夫婦バトル(=コミュニケーション)ができるようになります。

このように比喩を使って説明するのは簡単ですが実際は相当たいへん。行事もヘトヘト。でも一番疲れるのは投げ合っているおふたりです。とても大変な勝負になりますが、がんばればマイナスのループから抜け出すことができます。

このような安全なバトルを繰り広げられるためには前提条件がふたつあります。
  1. 行司との間に十分な信頼関係があること。下手な行司、もしかしたら相手に加担するんじゃないかという行司の前では勝負できません。土俵にふたりが上がる前に、力士A、力士Bとそれぞれ個別に十分お話し合いをして、この行司なら任せられるという安心感を得てもらいます。頼りない行司のもとでバトルしてはいけません。
  2. ホントに夫婦関係を続けたいのか。この人と一緒に困難を乗り越えていきたいのか。そういう気持ちが残っていることを確認します。
根底に「」があっても、その上にたくさんの塵が積もっていたら「愛」が見えなくなります。この人を愛しているのか、憎んでいるのかわからなかくなります。その場合でも行司がお手伝いします。塵をかき分けた底に「愛」がまだ残っているか否かを確認します。もし「愛」の片りんが残っていたら夫婦関係を回復する可能性にかけます。
もし、昔はあった「愛」がいつのまにかなくなり、他の道を選択した方がベターと判断したら、うまく別れるためのカウンセリングを行います。

離婚カウンセリングについては、また別項で説明します。

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