2013年6月27日木曜日

ひきこもり脱出講座(第3回)「夫婦」

学会などで多忙で投稿が遅れてしまいました。すみません。

第三回目のテーマは「夫婦」でした。
子どもの問題解決のために両親の協力が大切と良く言われますが、実際はどうなんでしょう。そのあたりをみなさんと一緒に深めました。
一見、ごく普通の問題なさそうに見える夫婦でも、その内実は厳しいものです。みんなそれを上手に取り繕っているだけなんですよね。
  • 仕事が忙しかったり、単身赴任だったり、「父親不在」は日本の家族の特徴でもあります。
  • 母親としては、夫に頼ったり期待しても仕方がない、自分でやるしかないと、ひとりでがんばって子どもに関わっているうちに「父親不在」が「父親不要」になってしまいました。
  • よく考えたら、ひきこもっているのは子どもだけでなく、親も別の意味でひきこもっているのかもしれません。両親が話し合ってもうまくいかないので、夫婦が向き合おうとしない、現実に向き合おうとしない、問題だとはわかっていても引いてしまい、自分の考えや相手への期待を言わなくなってしまいます。夫婦コミュニケーションから目をそらし、ひきこもっていたのかもしれません。
  • 親自身が育ってきた家庭も影響します。家族の中で会話するという習慣があまりありませんでした。だから家族同士で自分の考えを出し合い話し合いましょうといっても、実際どうしていいか感触がつかめません。
  • 夫婦間に過去の積み残しがあります。相手への怒りが未消化のまま残っているので、向き合うことができません。自分の気持ちを相手に伝えることができません。
こういう体験は、程度の差こそあれ、どの夫婦でもありうるパターンだと思います。
  • だから子どもに問題が生じたんだ。
  • 夫婦仲がうまくいかなかったから、子どもがひきこもったんだ。
ということではありません。このような「親原因説」はあまり意味がありません。
もちろん、家族の影響は大きいです。家族がうまくいかない部分もあるでしょう。しかし、どの家族も光と影を持っています。影を語り始めたらきりがないわけで、影を修復することが解決につながるとは思えません。どの家族だって、どの親だって、影があって当たり前。それを消し去ろう、どうにか変えようとすると、自分を見失ってしまいます。
影は、影としてしっかり認めてください。隠す必要はありません。
影がはっきり見えてくれば、光も見えてきます。
自分の影を見つけ出して、「私はダメな親なんです」と落ち込む必要はありません。
影は見えても、光を見るのは困難です。でも、家族の力でひきこもり問題を乗り越えるためには、家族の光がたくさん必要です。家族それぞれが持つ光をかき集めれば、とても大きなパワーとなります。それを子どもに伝えたら、子ども自身もひきこもりを乗り越えるパワーを獲得できます。

本人と話す時には「否定しない」「反論しない」「言い訳しない」という姿勢が必要と言われてきました。

はい、そのとおりです。
でも、それは子どもの気持ちを率直に受け入れ、言い訳しないで子どもに正面から向き合いましょうという意味です。子どもが自立し、巣立つためには安定な基盤が必要です。親が自分を認めている、受け入れているという体験が必要です。そのための姿勢です。

しかし、その結果、子どもの言いなりになってはいけません。
安心できる親子関係が築けたら、ウチの世界に閉じてひきこもっている子どもを外に連れ出します。そのためには、子どもを否定し、反論して、自分とは異質な他者を受け入れるエネルギーを付与します。

勇気を出して、強く言うことが必要です。愛情をもって、相手を傷つけ、それを乗り越えた相手を受け入れます。

それをまず夫婦間でやってみましょう。
でも、うまくいかないこともあります。
  • 本音で話すことができない。
  • 怒られるのが怖い。波風を立てたくない。
  • 相手の話を聴いていない。相手に理解されたと感じることができない。相手から反応がないのが嫌だ。
そんな気持ちをグループのみなさんで共有し、夫婦のコミュニケーションの難しさと、それを乗り越える具体的なやり方を実演しました。
  • 言わない主義ではなく、言ってほしい!
そうなんです。
ひきこもりから脱出するには、強いコミュニケーションが必要です。それは他者から傷つけられる不安に耐え、他者と交流する力です。
そのために、まず親同志が強いコミュニケーションの見本を見せてあげます。親が傷つく不安を乗り越えて、意見の合わない夫婦間で自分の率直な気持ちを伝え合ってみましょう。

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