2013年5月18日土曜日

やる気スイッチが入らない子どもの育て方

うちの息子はやる気を出してくれません。
勉強はもちろん、スポーツ、部活など何に対してもやる気がありません。ゲームとマンガ、楽をして面白いことだけは熱心にやります。その結果、ついつい親からの小言が多くなります。勉強でなくてもいい、スポーツ・趣味など何か熱中できるものを作ってほしい。勉強や精神的にもどん底まで落ちて、目を覚ましてやる気を出してくれるのかどうか不安です。子どもを放っておくべきとはわかっていても、そのまま這い上がれなくなるのではとつい思ってしまいます。
信じる強い心を持つにはどうすればよいでしょうか。

お子さんは、いわゆるlate bloomer(レイト・ブルーマー)なのですね。
遅咲きの花。

子どもは思春期のどこかでやる気というエネルギーを芽吹かせ、自立する拍車がかかります。
その時期は人によって異なります。小学校高学年くらいに早く芽吹く子もいれば、20歳過ぎて芽吹く遅めの子もいます。
芽吹く時期が異なるだけで、どちらが良いというわけではありません。早く芽吹いた方が綺麗な花が咲くとは限りません。

しかし、親にとっては早く芽吹いてくれた方がずっと楽です。心配しなくて済みますから。
遅く芽吹くlate bloomerは、親の負担が大きいです。
いつ芽吹くのだろうかと待っている間、ずっと気にかけて心配しなくてはなりませんから。

うちの子は、本当にいつか芽吹くのでしょうか?
芽吹かないまま終わってしまうのではないでしょうか?
ニートやひきこもりや、大人になってもずっと芽吹かない人の話をよく聞くので、、、

まず、お子さんの心の状態をチェックします。

1) 潜在力はあるけど、まだ芽吹かない遅咲きタイプなのか。
それとも
2) 病気や障害があって根腐れを起こし、潜在力がないタイプなのかを見極めます。

お子さんとお話しして診察すれば、両者の区別はつきます。

2) 〇〇病や〇〇障害といった問題があれば、それを取り除く治療が必要です。

1) 病気ではなく、遅咲きタイプであることがわかれば、基本的に放っておけば自然と芽吹きます。


子どもを放っておくべきとはわかっていますが、ただじっと待っているだけなのですか?
親が何かできることはありませんか?

相当しつこいですね(笑)。
親として何かしたいのですね。
待つことができないのですね。

それでは、こう考えましょう。
「やる気」は子ども自身が自ら作り出すものですから、親が子どもの心の球根に手を突っ込んで引っ張り出すわけにはいきません。
子どもが根を生やしている家族(親)がどのような土壌を用意しているかチェックしましょう。
土壌のpH度をチェックします。
ホントのpH度とは酸性・アルカリ性の度合い(水素イオン濃度)ですが、ここで言うpH度とは安心感の濃度です。

親の安心度がマイナスとは?
親の気持ちが不安に満ちています。
いったいこれからどうするつもりなの? 
このままではダメでしょ!
このままでは生きていけないでしょ!
このままではうまくいかない、どうにかしなくてはダメだと、親が焦り、大きな不安を抱えています。
この状態で子どもに接すると、親のマイナス・パワーを子どもに伝えてしまいます。

親の土壌の安心度は、子どものやる気スイッチの入り具合に大きく影響します。
十代という時期は親もその昔に経験したと思うけど、たくさんの不安に満ちています。
親の保護から巣立ち、自立しなければなりません。
自分の力で、危険に満ちた恐ろしい社会の中に入ってゆくのです。
うまくいくだろうか。失敗しないだろうか。
★勉強して成績を上げなければなりません。
★社会人になって収入を得なくてはなりません。
★人とうまくやって友人や仲間や、親密なパートナーを見つけなければなりません。
★結婚して自分の家庭を築かなければなりません。
そんな将来のことを考えると、とても自信なんか持てないですよね。
とっても大きな不安を抱えています。
それと同時に、希望の片りんも持っています。
とにかく前に進もう、「大丈夫だよ、きっと、、、」というプラスの要素(自信・希望)も持っています。
思春期は、その両者で柳のように大きく揺れています。

子どもは家族という土壌に根を生やし、成長しています。まだ土壌から抜け出して離れてはいません。
土壌(親)の安心度が、根を伝ってそのまま子どもに伝わります。
親が不安だと、子どもも不安になります。

逆に、親の土壌に安心の土壌を多く含んでいれば、子どもはそれを吸収し、心細い自立のプロセスを自信と希望の力で乗り越えることができます。

安心度がプラスの親は、本人のエンジンが始動するまで待つことができます。
そして、肯定的な期待感を与えることができます。
思春期は、勉強も、受験も、人間関係も、部活も、不安なことだらけです。
それに耐えられないと撤退します。

「でも、きっと大丈夫だよ!」
未来のことなど、だれもわかりません。大丈夫か大丈夫でないかなんて、だれも予想できません。
親が持つ「きっと大丈夫だよ!」という(究極的には)根拠のない安心感(希望)が子どもに移ると、子どもも根拠なく安心して、不安を乗り越えることができます。
だから、ほめるべき時は思いっきりほめてください。
肯定的に評価してあげて下さい。
ただし、ほめたからといってすぐにエンジンが起動するわけではありません。
あとはその時期が来るまで待つことです。それが親にとって一番つらいのです。親の勝負どころです。

また、ほめることと甘やかすことは違います。
ほめることは、子どもの社会的自我の部分に働きかけることです。
甘やかすことは、子どもの万能的自我に働きかけることです。
ほめる時はしっかりほめ、厳しく叱る時はしっかり叱りましょう。

安心度がプラスの親はこんな風に考えるでしょう。
「たしかに、early bloomerの方が有利ですよ。受験や進学・就職という節目のハードルで評価されますから。
学歴のレールを考えれば、二十歳を超えてハードル(選別)が済んだ段階で芽吹いても遅すぎますから。
でも、ホントに遅いですか?
長い人生を考えれば、学歴のハードル以外にも、就職、結婚、子育て、中年期の危機、更年期、退職期、そして老年期。
一生たくさんのハードルがあります。
学歴が優れて一流の会社に勤めても、その後不幸になる人がたくさんいるし、その逆も真。
我々親世代が育った高度経済成長時代は「狭き門より入る」価値観が世の中に満ちていました。「選ばれた人が良い(幸せな)人生を送れるんだ」という成長神話が十分に通用していました。
今の日本社会は物質的には豊かになり、狭き門より入らなくても、物質的には十分に豊かになれます。むしろ大切なのは精神的な満足感・幸福感。それは学歴や高収入のみで成就するものでもないはずです。
真の豊かさは何?
真の幸せとはなに?
それを考えると、むしろlate bloomerの方が有利かもしれません、、、」

心配しないで、あまり干渉せず、放っておくことが大切なのはよくわかります。
でもどうやったら良いのかよくわかりません。

まだしつこいですね(笑)。
いえいえ、失礼。
そのお気持ちは良くわかります。
でも、残念ながらそう考えるあなたの安心度はまだまだマイナスであることにお気づきですか?
子育てはとても不安です。どの親でも、子どもへの不安はとても大きいものです。
親自身の心がマイナス(不安)なのに、口先だけプラス(安心)にしなさいと言っても無理です。無理にやろうとしたら苦しくなるばかりです。

まず、親自身の気持ちの除染作業を行わなくてはなりません。
子どもにどう接するかという表面的な口先レベルの問題ではないのです。
その元となる親の気持ちをマイナスからプラスに切り替えなければなりません。
相当、根が深いですよ。
電気のスイッチみたいに、オン・オフをそう簡単に切り替えることはできません。

親の除染作業って何ですか?

それは深い話なので説明しにくいのですが、たとえば次のような要素が挙げられます。
親の期待値。親が子どもに期待するのは当然のことですが、その値がどうか。適切にセットされているか。親が優秀で成功している場合、時にセット値が高すぎる場合が見られます。
親自身が育った土壌との関連。自分の親との関係がまだ十分に整理されていない場合もあります。
両親の協力体制。夫婦間のコミュニケーションに課題があったり、夫婦の間に横たわる長年のシコリがじゃまをして、親としてのうまい体制を組めない場合もあります。

このように考えると、子どものやる気スイッチは、TVコマーシャルのように、身体のどこかに隠されているスイッチを探せばよいといった簡単な事ではないと理解していただければと思います。

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