2013年5月19日日曜日

橋下氏の慰安婦発言と男性心理学


橋下氏の慰安婦発言はツッコミどころ満載で話題になっている。
国際問題・外交問題や、女性問題としてのツッコミが多いが、私は「男性問題」として男性心理学の視点からツッコミましょう。

「あれだけ銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、そんな猛者集団というか、精神的にも高ぶっている集団は、どこかで休息をさせないと、、、」

高ぶった神経を鎮めるために性行動に走るという構図は、射精によってエネルギーを抜くという具合に男性にとっては自分の身体体験になじみ分かり易いが、女性にとっては何を言っているか理解しがたいと思う。

でも、戦場で戦闘した夜に慰安所に走るだけではないでしょう。
神経が昂ろうが昂るまいが、いずれにせほ男性たちは慰安を必要としている。

男性も女性も、大人も子どもも、精神的なストレスやトラウマが加われば、それを処理するためにさまざまな反応を起こす。
その主なものは3つある。

  1. 心理化(抑うつやパニック発作とか)、
  2. 身体化(頭痛、肩こり、疲労感など多様な不定愁訴)、
  3. 行動化(攻撃性・暴力、いじめ、盗み、食行動異常、セクハラ、性的逸脱など)

男性にとってsexualityはストレスの対処機制の手段でもある。
愛するパートナーと心も身体も一体になり、射精するという行為は、究極の親密性である。愛情が成就し、孤独を癒してくれる。
Sexualityは両刃の剣。うまく使いこなせば至福が得られる。愛情を持ち、社会的・対人関係的に許容された形でうまく具現化すれば、人生の究極の幸福と生きがいに繋がる。
逆に、社会的・倫理的に許容されない形でやってしまうと、多大な加害性を帯びた暴力となり、他者にとんでもない迷惑をかけてしまう。たとえば性的虐待など、女性や子どもの尊厳を根底から破壊する。

戦士たちが慰安を必要としているのは高ぶった神経(攻撃性)を鎮めるというより、戦時下のストレスによる不安を癒すためだ。
「高ぶった神経」は攻撃性の象徴的表現として男性の規範に合致する。なにしろ戦場では最大の攻撃性を発揮しないといけないわけだから。
その陰にある「不安」というマイナスな心情は女々しく、男らしさを旨とする戦士には許容されない感情だろう。
でも、実際には戦地で精神の破綻をきたすケースはたくさんあるわけで、PTSDという概念も、もともとは戦士たちの事例から見出された。
日本軍はそのこともタブー視して、見ないように抑圧してきたに過ぎない。

「おい、オンナ遊びしに行こうぜ!」
というセリフは酔っぱらったワル男仲間でのみ通用する、「度胸のないヤツにはできないだろう!?」的な勇気ある行為として扱われるのだが、実は女性に甘えて(依存して)、男性の内面にある言語化できない不安・孤独を癒そうとしているのだ。(私もその昔、経験があるので懺悔を込めて振り返ってます。ハイ。)

逃げるメスを追いかけ、オスは攻めなければならない。
その対象を、愛し合うパートナーに向けるか、セクハラとか売春とか浮気とか規範的に問題のあるカタチで向けるか。その違いは加害性と規範性という観点からはとんでもなく大違いなのだが、男性心理学的にみて、そのエネルギー(衝動)の発するところは大差ない。

橋下氏の「慰安婦を使え」発言に、「そんな男と一緒にするな。男性への侮辱だ!」と抗議する男性たちは、男性自身が誇りを持って死守するsexualityの実態(厄介さ)に気づいていない。本来、男性は規範を逸脱しないと癒すことができない心理的対処規制の未熟さ(弱さ)を抱えている。橋下氏の乱暴な発言が、男の隠し持つ弱みに触れてしまい、抵抗しているわけだ。

男性は、自らの内なるabuser(加害性)に気づかねばならない。マッチョで野蛮な攻撃性は、男性に求められる社会的性役割であると同時に、内面の弱さを隠す鎧なのだ。
自身の弱さに気づくことができたら、男性たちは慰安婦というヘンな対処機制を用いずに、もうちょっとマシな方法で心の健康を維持することができる。たとえば、私が経験した中では、、、

  • 大震災の直後に陸前高田に入った時のこと。被災地を回った晩には支援者たちを集めて、一日の体験をシェアし合うミーティングを開いた。悲惨な状況に触れた二次受傷によるバーンアウトを少しでも和らげたかった。
  • アメリカの男性グループMankind Projectは男性たちの自助グループである。定期的に男性たちが集まり、心理的に安全な環境をつくり、鎧の下の隠されたナイーブさを分かち合っている。私も何度か参加した。
  • 東京都の児童相談所で、子どもを虐待した父親たちのグループをファシリテートした。女性たちのグループ(子育てグループや、ACのグループや、女性運動のグループやら)は結構あるけど、男性のグループはめずらしい。酒場ではしょっちゅうやっているが、マジメに関連し合う能力が弱い男性が多いから。

そのほかにも、いろいろな方法はあるだろう。
カウンセリングもそのひとつだ。

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