2013年5月9日木曜日

イワシ時代を懐かしむサメ


昨晩は研修医時代の仲間の教授就任祝賀会に昔の仲間が集まった。
司会から「何かひとことをお願いします」と言われ、つい昔のノリでツッコミを入れてしまった。

そう、あの頃は群れていたんですよ。
一緒の病院で研修して、よく失敗して上の先生から叱られていた。
その上の先生に30年ぶりに出会った。
「ああ、田村くん。あの頃はよくイジメて済まなかったねえ。」
えっ、イジメていたんですか?
確かによく突っ込まれたけど、イジメられたとは思っていなかったんですけど。
マトモな指摘は素直に受け入れ、理不尽と感じた指摘は無視していた。
休みになると、まだ結婚したての妻たちと一緒に飲み明かしたり、泊りがけで旅行に出かけたり。
昨夜は酔いにまかせて教授クンの当時の恥ずかしいネタをばらしてしまい、今反省しています。
あの頃はみんなイワシでした。
泳ぎ方もわからず、泳ぐ力もなく、ひとりで泳ぐ自信なんかなかった。
社会に入ったばかりの職業人としても、家族を作ったばかりの家庭人としても。
お互いにツッコミを入れながらなんとか泳いでいた。
「ほら、遅れてるぞ。その泳ぎ方は違う。こうやって泳ぐんだよ!」
「そんなに早く泳ぐなよ!自分だけ偉くなって群れから離れるなよ!」
よく迷い、失敗し、傷ついていた。
先頭を走るボスが道を迷い、群れが解体したこともあった。

やがてイワシたちは力をつけサメに変身した。力も、自分なりの泳ぎ方も、自信も獲得した。
英国で家族療法を学び、他の人とは違う自分独自の泳ぎ方を会得した。
(患者側も医者側も)医療保険に守られなくともやっていける自信も得てしまった。
そうなると、群れにいることが逆に窮屈になる。
そうやって群れから離れていった。

その離れた仲間と久しぶりに会った。
昔の居心地を思い出し、とても懐かしくもあり、寂しくもあった。
もうツッコミを入れることができない。
イワシの頃は、ツッコミがないと不安だった。
サメになると、突っ込まれるとムカついてしまう。
もう、群れには戻れない。お互いに離れて自分のテリトリーを確保し、ひとりで泳ぐしかない。
泳ぐ方向が違っても、誰もツッコミを入れてくれない。入ったとしても、素直に修正することができない。

自由と共に、孤独を得た。

0 件のコメント:

コメントを投稿